「その頭どうした? しかも金髪だし」

 玄関ドアを開けたテッちゃんも、開口一番に菜々と同じような反応をしたから笑ってしまった。

「とりあえず、中に入れてよ。話はそれから」

「私もお邪魔するね」

 私の背後から菜々が笑顔で手を振り、それに反応して照れ隠しにポーカーフェイスを作るテッちゃんが可愛い。この大好きな二人を微笑ましく応援出来たら良かったのだけど……私の胸は針山のようにチクチクと痛んでしまう。

「テッちゃん、コーラ好きだよね? 持ってきたの」

「お、おう」

 勝手知ったる幼なじみの家のキッチンに入ると、テッちゃんが少し困ったように目を泳がせてから、菜々にソファを勧めているのが見えた。そして、彼はローテーブルを挟んで向かい合って床に座った。

 私がフラれたこともテッちゃんが自分を想っていることも知らない菜々は、無邪気に「栗林君は夕璃がいなくなったこと知っていたの?」なんていきなり確信をつく話題をさらりと振っている。

「夕璃がいなくなったって? どういう意味?」

「えっ? だから、あれ? だって、知っているから手紙を預かったんじゃないの? 二週間も会わないとか連絡をとらないことなんてないよね?」

 菜々がきょとんとした表情で、何度も首をひねっている。彼女の中では、最後の手紙を預かっているのはテッちゃんで決定しているようだった。と言っても、私の中でも他に思い当たる人はいない。

「お父さんが言うにはね、私は終業式の日の夜から音信不通だったんだって」

 コーラの入ったグラスを三つテーブルに置くと、私は少し間を空けてテッちゃんの隣に座った。未だに状況を呑み込めないテッちゃんは目をまん丸くして私を見た。

「ハッ? どういう意味?」

「えっ? 夕璃、記憶がないだけじゃなくて行方不明だったってことなの?」

 菜々が素っ頓狂な声を上げると、テッちゃんが一瞬そっちへ視線をやってからまた私の方を見た。

「記憶がないって?」

「うん、二週間分の記憶がないの。旅行の時に使うスーツケースがなくて、洋服もいくつか消えているの。いつも一緒に寝ているテディベアもない。だから、私は自分の意志でどこかへ行っていたんだと思うの」

 私は横にいるテッちゃんの方へ身体ごと向き直って、まっすぐ彼の顔を見た。

「どこかへ行く前に、私、テッちゃんのところへ寄らなかった?」

「……えっ? いや、来てないな。あの日は……ほら、お互いに気まずかったから、おまえだって俺のところには来なかったんじゃないか?」

「……だよね」