「菜々と最後に連絡とったのって、いつが最後だった?」

「えっ? いつだろう……?」

 菜々がテーブルに置いていた自分のスマホをタップし始める。

「ああ、終業式の日だ!」

 菜々が私に差し出したスマホ画面はスミレと三人のグループメッセで、テッちゃんと上手くいったと誤解した二人が『おめでとう』のスタンプを押している。

 だけど、その後は私は既読にしていなかったのか会話に加わっていない。

 今朝、このLINEも自分で確認したから、今はもう既読がついてしまっているけれど。

 私は菜々にあの手紙を見せようか迷っていた。だけど、あれの意味を菜々が知っているとは思えないし、どう見ても遺書であるあの手紙を読んだら心配するだけだろう……。それが分かると切り出せない。

「どうかしたの?」

 菜々が心配そうに私の顔をのぞき込んでいる。深刻そうな顔をしているのかもしれない。

 私は笑顔を作って取り繕うとしたけれど、なぜか目から涙が一粒テーブルの上に落ちた。

「やだ、大丈夫? 夕璃。なにかあったの?」

 菜々の声を聞いた途端、スイッチでも押されたように涙が溢れて視界が歪んでいった。

「自分でもわからないの……。何があったのか」

 恥ずかしいほどの泣き声が自分ののどに響くけれど、我慢することが出来ずに泣き出してしまった。

「なに? どうしたの?」

 菜々がおろおろと戸惑っているのがわかり、私はテーブルの下に用意していた手紙を差し出した。

「手紙……?」

 封筒に書かれている菜々の名前と携帯番号を確認するようにジッと見つめてから、菜々は開封していある封筒の中から便箋を取り出した。そして、すぐに顔を上げて私を見た。

「えっ? どういうこと?」

「だから、分からないの。気がついたら佐間川にいて、髪も染めて派手な服を着て……とにかく後頭部が痛くて。で、気がついたら救急車で運ばれて病院にいた」

「……えっ? どういうこと?」

 驚いている顔をして、思考が働かないのか菜々が同じ言葉をくり返す。