小刻みな振動を感じて目が覚めた。
視界に入ってきた低い天井は車の中だろうと思い、焦って勢いよく起き上がった。
なに? どこに連れていかれるの⁉
「夕璃?」
「おっ、気づいたか?」
運転席の来夢さんとバッグミラー越しに目が合った。
助手席に座っているミナもこちらをふり向き、ホッとした表情を浮かべた。
「私……どうしたんだった?」
そう、アイちゃんとユメノちゃんが帰ってから、私は数日間悩んでいた。
一人で悩んだ末、自分で警察に持っていくことは無理だと諦めたのだ。
きっと追手が来る。
それに、証拠品が警察の手にわたって家宅捜索でも入ったら、誰かに恨まれる結果になるかもしれない。幹部の中には捕まらない人も出てくるかもしれない。
その人たちに狙われる可能性だってある。
そして、今の自分は松村に狙われている。
それがある限り、家に帰ることができないと思った。
私のせいでお父さんになにかあったらと思うと、帰ることなんて出来なかった。
だから、私は全てを第三者である菜々に託そうと思ったのだ。
今の私はドラッグ中毒でもなければ性被害にも遭っていない。
だけど、このままだったらその両方の可能性がある。
Shin‐RaiはМ氏の息のかかった場所だから。
いつどうなるかなんてわからない。
そもそも私はこの先、家に帰れないということは、チア部の合宿や高校に行けなくなるのだ。
だったら、もう自分の生活に戻れないのだろうと思えた。
だから、死を選んだんだ――――。
「夕璃? 真っ青だけど大丈夫? 目覚めないから病院へ連れて行くところだったけど、やっぱり行く?」
「えっ?」
頭の中が混乱していて、今の状況が見えなかった。
「私、どうしたんだった? 殴られたの?」
「ううん、倒れたの。ファミレスでチャミと話していて。あの子、詩音さんって人と偽って夕璃に近づいたんでしょ?」
ああ、そうだった。
じゃあ、あのニュースも本当なんだろうか――?
「親父たちは逮捕されて、女の子たちも無事に保護されている。全員じゃないがな」