「ナナちゃんはミーナを助けたいんでしょ?」
「……だって、ミナは本当にあの家から出たがっているの。シェルターだって紹介できるから。望む子にはみんなに紹介できるよ」
アイちゃんやユメノちゃんだって、あの家から出られないわけじゃない。
そう言いたかったけど、今の生活に満足している二人には言っても逆効果だとわかっていた。
「みんながそんなところへ行けると思う? 全員ドラッグ中毒なんだから逮捕されるんだよ」
「そうそう、ミーナだって、今の辛さから抜け出したいからそう言うかもしれないけど、抜け出したら抜け出したで、逮捕されて強制的にドラッグを抜くリハビリ施設に入れられる。そこでドラッグ中毒のダメな女だという扱いを受ける」
「結局、正義感を振りかざして悪を倒したと思い込んでいるナナちゃんには無縁の世界で、どうせそんなミーナとは疎遠になっていくんでしょ? 今だけ同じ目線になっているふりをして」
「そんなことしない」
あまりにも酷い言い方に、私は低い声で反論した。
「ミーナの方が嫌がると思うよ」
「あたしもそう思う。あたしだったらイヤだもん。結局、高見の見物じゃない」
そう言われてしまうと、反論ができなかった。
確かに私は真樹紅にずっといようとは思っていないのが現状だった。
ミナとはずっと友達でいたいと思っているけど、お父さんのいる家に帰って高校に通う私を彼女がどう思うのか。
夏休みに気まぐれにスナックで働いていたのは事実で、自分の危険を顧みずにミナを助けたいと思ったなんて、ただの押し付けのようなものかもしれない。
それが痛いほどわかっても、私はこのチャンスを逃したくないと思っていた。
救われたなんて思わなくても、今の地獄から抜け出したい子はいるはずだ。
私だったら、日常的に性被害に遭ったり、薬漬けにされたり、やりたくない仕事をさせられたりするのは地獄でしかないと思う。
恨まれても自分勝手だと思われても、危険を冒してまで録画した映像が役に立つことは間違いないと思えた。
だけど、当事者である彼女たちの言い分だってその通りだと思えた。
私は偽善者なのかもしれない。
「それに、真聖君が逮捕なんてされるなら、あたしは許せないよ」
「私も。真聖さん自身がいいと言っていたとしても、本気で警察に行く気なら、松村さんにチクって本当にひどい目に遭わせるよ」
どんどんエスカレートしていく彼女たちの言動に恐怖を感じた。
そして、きっと真聖さんのためなら本当にするんだろうと思えた――――。