土曜日、私と晴人くんはトウマ先生にお礼を言いたいと思い、病院へ行くことにした。
記憶喪失のときも、記憶を取り戻してからもすごくお世話になったし、私の大好きな憧れの先生だから。
晴人くんも同じ気持ちだったようで、一緒に行くことになった。
――これって、一応、デートかな。
二人並んで歩くことができるだけで、口角が上がってしまう。恋人、って感じることができて嬉しいから。
「この花束で良かったかな。カーネーションなんだけど」
「うん、いいと思うよ。俺なんか手ぶらで来ちゃったし」
「うーん、何かトウマ先生のイメージに合わないような気がしちゃって」
「あはは、イメージってなに。大丈夫だよ、美雨が一生懸命選んだんだから、喜んでくれるに決まってるよ」
晴人くんにそう言ってもらえたら、何だかとても安心できる。
ちゃんと花言葉を調べてから買えば良かったなって後悔していたけれど、そうだよね。トウマ先生だもん、きっと喜んでくれるはず。
そう思うと、少しだけ不安がなくなった。
「なぁ、美雨」
「どうしたの?」
「俺、将来、心療のカウンセラーになりたいんだ」
「カウンセラー……?」
カウンセラーというのは、心の悩みを抱えている人を、サポートする仕事らしい。
最近では心療内科や精神科だけでなく、学校で行えるスクールカウンセリングも増えていて、心の悩みを持った人に寄り添うことができるそう。
晴人くんは、その話を聞くカウンセラーの先生になりたい、ということだろうか。
「どうしてそう思ったの?」
「んー、俺みたいに何となく悩みを抱えている子が、理由もなくいじめをしちゃうとか、自分を傷つけてしまうとか、そういうことあるかもしれないと思うんだ。だから少しでもそういう子たちの力になりたい」
――わぁ、すごい。
今、何だか晴人くんがすごく輝いた気がした。周りの人たちとは程遠い存在にいるような、そんな感じ。
もう将来の夢を持っていて、それに向かって頑張りたいという思いがある晴人くんがかっこいい。
「資格とか取らなきゃいけないから、大変だと思うけどね」
「そうなんだ……。で、でも私、応援してるよ! 願わくば、ずっと晴人くんの隣で応援していたいな、なんて」
今のは、ちょっと攻めた発言だったかな。
自分の気持ちをありのままに伝えすぎて、想いを伝えることに抵抗と恥ずかしさがなくなっていっている気がする。
いいことなんだけどね……。ちょっぴり恥ずかしくなる。
「それは、美雨が俺のお嫁さんになってくれるってこと?」
「へっ!?」
「あははっ、やっぱり、からかうと面白いよな。でも本当だよ、いつか結婚できたらいいな……って、俺は思ってる」
今のって、今のって、遠回しのプロポーズだったりするのかな。
顔から火が出そうなくらい、頬が熱い。でもそれと同じくらいに胸があたたかくて……嬉しい。
「まぁ、それは将来の話として。美雨は? 夢とかあるの?」
「私の、夢……」
最近、少しだけ考えていることがある。
――医者に、なること。
もちろん難しいことだし、責任重大なのは重々承知している。だけどトウマ先生を憧れる私のように、誰かに手を差し伸べてほしいと思っている人たちはたくさんいると思う。
病気で苦しんでいる子たちを、一人でも多く救いたいという想いがあるから。
晴人くんにそのまま伝えると、いつもの笑みを浮かべてくれた。
「いいじゃん。美雨が医者……ね。すごく向いてると思うよ。おっちょこちょいで失敗しないように気をつけないとダメだけど」
「は、晴人くん、それは余計だよっ」
「冗談だって。本気で応援する」
「でも、まだ考えている途中だよ。本当になりたいのかも分からないし、ただ憧れてるだけかもしれないし……」
「それでいいんだよ。未来なんて、いくらでも可能性はあるから。じっくり考えてこう、一緒に」
私は強く頷いた。
目標や夢を持っている晴人くんは、やっぱり私の憧れ。そういうところが、好き。
晴人くんと一緒にいると、いつも胸が躍る。嬉しくて、楽しくて、幸せで。苦しいこともいっぱいあったけれど、それを含めて恋だよね。
――どうして、この世界に晴人くんという人が存在するんだろう。こんな気持ちをくれて、恋を教えてくれて、ありがとう。
「さ、行こ」
「うん!」
こうやって手を繋いでいるだけで、本当に本当に幸せ。
きっとこれからもっと晴人くんのことが好きになるんだろうなぁ、と晴人くんの大きい背中を見ながらそう思った。
記憶喪失のときも、記憶を取り戻してからもすごくお世話になったし、私の大好きな憧れの先生だから。
晴人くんも同じ気持ちだったようで、一緒に行くことになった。
――これって、一応、デートかな。
二人並んで歩くことができるだけで、口角が上がってしまう。恋人、って感じることができて嬉しいから。
「この花束で良かったかな。カーネーションなんだけど」
「うん、いいと思うよ。俺なんか手ぶらで来ちゃったし」
「うーん、何かトウマ先生のイメージに合わないような気がしちゃって」
「あはは、イメージってなに。大丈夫だよ、美雨が一生懸命選んだんだから、喜んでくれるに決まってるよ」
晴人くんにそう言ってもらえたら、何だかとても安心できる。
ちゃんと花言葉を調べてから買えば良かったなって後悔していたけれど、そうだよね。トウマ先生だもん、きっと喜んでくれるはず。
そう思うと、少しだけ不安がなくなった。
「なぁ、美雨」
「どうしたの?」
「俺、将来、心療のカウンセラーになりたいんだ」
「カウンセラー……?」
カウンセラーというのは、心の悩みを抱えている人を、サポートする仕事らしい。
最近では心療内科や精神科だけでなく、学校で行えるスクールカウンセリングも増えていて、心の悩みを持った人に寄り添うことができるそう。
晴人くんは、その話を聞くカウンセラーの先生になりたい、ということだろうか。
「どうしてそう思ったの?」
「んー、俺みたいに何となく悩みを抱えている子が、理由もなくいじめをしちゃうとか、自分を傷つけてしまうとか、そういうことあるかもしれないと思うんだ。だから少しでもそういう子たちの力になりたい」
――わぁ、すごい。
今、何だか晴人くんがすごく輝いた気がした。周りの人たちとは程遠い存在にいるような、そんな感じ。
もう将来の夢を持っていて、それに向かって頑張りたいという思いがある晴人くんがかっこいい。
「資格とか取らなきゃいけないから、大変だと思うけどね」
「そうなんだ……。で、でも私、応援してるよ! 願わくば、ずっと晴人くんの隣で応援していたいな、なんて」
今のは、ちょっと攻めた発言だったかな。
自分の気持ちをありのままに伝えすぎて、想いを伝えることに抵抗と恥ずかしさがなくなっていっている気がする。
いいことなんだけどね……。ちょっぴり恥ずかしくなる。
「それは、美雨が俺のお嫁さんになってくれるってこと?」
「へっ!?」
「あははっ、やっぱり、からかうと面白いよな。でも本当だよ、いつか結婚できたらいいな……って、俺は思ってる」
今のって、今のって、遠回しのプロポーズだったりするのかな。
顔から火が出そうなくらい、頬が熱い。でもそれと同じくらいに胸があたたかくて……嬉しい。
「まぁ、それは将来の話として。美雨は? 夢とかあるの?」
「私の、夢……」
最近、少しだけ考えていることがある。
――医者に、なること。
もちろん難しいことだし、責任重大なのは重々承知している。だけどトウマ先生を憧れる私のように、誰かに手を差し伸べてほしいと思っている人たちはたくさんいると思う。
病気で苦しんでいる子たちを、一人でも多く救いたいという想いがあるから。
晴人くんにそのまま伝えると、いつもの笑みを浮かべてくれた。
「いいじゃん。美雨が医者……ね。すごく向いてると思うよ。おっちょこちょいで失敗しないように気をつけないとダメだけど」
「は、晴人くん、それは余計だよっ」
「冗談だって。本気で応援する」
「でも、まだ考えている途中だよ。本当になりたいのかも分からないし、ただ憧れてるだけかもしれないし……」
「それでいいんだよ。未来なんて、いくらでも可能性はあるから。じっくり考えてこう、一緒に」
私は強く頷いた。
目標や夢を持っている晴人くんは、やっぱり私の憧れ。そういうところが、好き。
晴人くんと一緒にいると、いつも胸が躍る。嬉しくて、楽しくて、幸せで。苦しいこともいっぱいあったけれど、それを含めて恋だよね。
――どうして、この世界に晴人くんという人が存在するんだろう。こんな気持ちをくれて、恋を教えてくれて、ありがとう。
「さ、行こ」
「うん!」
こうやって手を繋いでいるだけで、本当に本当に幸せ。
きっとこれからもっと晴人くんのことが好きになるんだろうなぁ、と晴人くんの大きい背中を見ながらそう思った。