家の前まで着いて、深呼吸をし息を整える。
――藤間くんと、喧嘩したままではいたくないと思ったから。
風穂ちゃんの話を聞いて思った。親友のために行動できない自分がものすごく恥ずかしいって。
だからまずは、藤間くんと仲直りしよう、って目標を立てたんだ。
藤間くんは私たちが帰るときもう教室にはいなかったから、もう家にいるのかもしれない。
緊張するけれど、勇気を出してインターホンを鳴らした。
『はい』
「あっ、藤間くん? 綾瀬です」
『……なに?』
「急にごめんね。お話したいことがあるの。だから、出てきてくれないかな」
インターホンを突然切られて、私はビクッと肩を震わす。
――やっぱり怒らせちゃったかな。もう口も聞いてくれないかな。
そう思っていたけれど私の予想とは反対に、藤間くんは息を切らしながら家を出てきた。
「と、藤間くん、どうしたの!?」
「どうしたのって、綾瀬が呼び出したんじゃん」
「そ、そうだけど。何でそんなに急いでるの?」
そう言うと、藤間くんは慌てて口を開いた。
「……だって、話したいことがあるって言われたから。別れ話かと思うじゃん」
ドキッ、とした。
ということは藤間くんは、心配して急いで出てきてくれたってこと?
嬉しさと安心の涙が一気に流れる。いつもの、藤間くんの優しさだ……。
「と、うまくん……。今日はごめんね。藤間くんが私のために行動してくれたこと、知ってるのにっ……」
「気にしてないよ、もう。綾瀬が真田のことを考えて言わなかっただけでしょ。ていうか、俺が怒ることじゃないし。俺は綾瀬に自分のことを大切にしてほしいだけなんだよ」
「そう、なの?」
「そうだよ。あれはただの怪我じゃすまないよ。綾瀬には長生きしてもらわないといけないから」
藤間くんが冷たかった理由は、私への心配の気持ちだったんだ。
私が自分のことを大切にしていないと思ったから、少し怒っていただけで。
私のことを嫌いになったとか、そういうわけではなかったんだ。
「あーもう、泣くなよ。綾瀬って泣き虫だよね」
「な、泣き虫じゃないよ」
「嘘だ。俺がいるときはほとんど泣いてると思うけど」
「それは藤間くんが泣かせてるだけっ」
「俺が泣かせた!? いつ?」
いつも、私が藤間くんといるとき泣いている理由は。
藤間くんが好きだから。藤間くんの優しさが心に響くんだ。
優しさって、ただ相手に優しいだけじゃない。厳しく叱るときもあるけれど、それは相手のためを想っているから。
だから藤間くんは、本当の優しさを私に見せてくれている。そう思うと、自然と涙が出てきちゃうんだ。
「私、藤間くんに出会えて心から良かったって思ってるよ」
「なに、急に。お別れの言葉みたいなのやめて」
「あはは、お別れじゃないよ。もっとずっと一緒にいたい。おじいちゃんおばあちゃんになっても、笑っていたい。藤間くんの隣で」
藤間くんは少し恥ずかしそうにしながら、「俺も」と答えてくれた。
――うれしい。好きな人と未来を誓うなんて、こんなに幸せなことがあるのかな。
そう、思っていたのに。
ズキン、ズキン、ズキン……。今まで以上に、痛みが頭全体に響いた。
「……っ」
「綾瀬? 綾瀬、どうした? 綾瀬っ!!」
『あんた、晴人のこと好きなの?』
『そんなわけないだろ、こんな地味女が俺のことを好き? 笑わせんなよ、美虹』
――これは、真田さんと藤間くんの声。どうして二人の声が聞こえてくるの……?
意識が遠のいていくなか、藤間くんが叫んでいるのが微かに聞こえる。
ふっ、と頭の痛みがなくなると同時に私は意識がプツッと切れた。
――藤間くんと、喧嘩したままではいたくないと思ったから。
風穂ちゃんの話を聞いて思った。親友のために行動できない自分がものすごく恥ずかしいって。
だからまずは、藤間くんと仲直りしよう、って目標を立てたんだ。
藤間くんは私たちが帰るときもう教室にはいなかったから、もう家にいるのかもしれない。
緊張するけれど、勇気を出してインターホンを鳴らした。
『はい』
「あっ、藤間くん? 綾瀬です」
『……なに?』
「急にごめんね。お話したいことがあるの。だから、出てきてくれないかな」
インターホンを突然切られて、私はビクッと肩を震わす。
――やっぱり怒らせちゃったかな。もう口も聞いてくれないかな。
そう思っていたけれど私の予想とは反対に、藤間くんは息を切らしながら家を出てきた。
「と、藤間くん、どうしたの!?」
「どうしたのって、綾瀬が呼び出したんじゃん」
「そ、そうだけど。何でそんなに急いでるの?」
そう言うと、藤間くんは慌てて口を開いた。
「……だって、話したいことがあるって言われたから。別れ話かと思うじゃん」
ドキッ、とした。
ということは藤間くんは、心配して急いで出てきてくれたってこと?
嬉しさと安心の涙が一気に流れる。いつもの、藤間くんの優しさだ……。
「と、うまくん……。今日はごめんね。藤間くんが私のために行動してくれたこと、知ってるのにっ……」
「気にしてないよ、もう。綾瀬が真田のことを考えて言わなかっただけでしょ。ていうか、俺が怒ることじゃないし。俺は綾瀬に自分のことを大切にしてほしいだけなんだよ」
「そう、なの?」
「そうだよ。あれはただの怪我じゃすまないよ。綾瀬には長生きしてもらわないといけないから」
藤間くんが冷たかった理由は、私への心配の気持ちだったんだ。
私が自分のことを大切にしていないと思ったから、少し怒っていただけで。
私のことを嫌いになったとか、そういうわけではなかったんだ。
「あーもう、泣くなよ。綾瀬って泣き虫だよね」
「な、泣き虫じゃないよ」
「嘘だ。俺がいるときはほとんど泣いてると思うけど」
「それは藤間くんが泣かせてるだけっ」
「俺が泣かせた!? いつ?」
いつも、私が藤間くんといるとき泣いている理由は。
藤間くんが好きだから。藤間くんの優しさが心に響くんだ。
優しさって、ただ相手に優しいだけじゃない。厳しく叱るときもあるけれど、それは相手のためを想っているから。
だから藤間くんは、本当の優しさを私に見せてくれている。そう思うと、自然と涙が出てきちゃうんだ。
「私、藤間くんに出会えて心から良かったって思ってるよ」
「なに、急に。お別れの言葉みたいなのやめて」
「あはは、お別れじゃないよ。もっとずっと一緒にいたい。おじいちゃんおばあちゃんになっても、笑っていたい。藤間くんの隣で」
藤間くんは少し恥ずかしそうにしながら、「俺も」と答えてくれた。
――うれしい。好きな人と未来を誓うなんて、こんなに幸せなことがあるのかな。
そう、思っていたのに。
ズキン、ズキン、ズキン……。今まで以上に、痛みが頭全体に響いた。
「……っ」
「綾瀬? 綾瀬、どうした? 綾瀬っ!!」
『あんた、晴人のこと好きなの?』
『そんなわけないだろ、こんな地味女が俺のことを好き? 笑わせんなよ、美虹』
――これは、真田さんと藤間くんの声。どうして二人の声が聞こえてくるの……?
意識が遠のいていくなか、藤間くんが叫んでいるのが微かに聞こえる。
ふっ、と頭の痛みがなくなると同時に私は意識がプツッと切れた。