セシリアは夢をみていた。
 卒業パーティーでジェラルドの隣にいたイライザは、商売人の娘だったが母親が下位貴族の出だった。
 母親は家に出入りしていた商人と駆け落ちをして、国の外れの田舎に居をかまえた。そこで授かったのがイライザだ。
 イライザは生まれながらにして魔力を備えていたわけではない。それは魔法貴族の血が半分しか流れていないのが原因だった。
 しかし十五歳で魔力が出現し、焦った母親が生家に連絡をいれ、家を継いでいた母親の兄――伯父の養女となった。
 そんななかイライザは、十六歳になる年に魔法学園の後期課程一年として入学してきた。後期課程からという中途半端な時期に入学してきたイライザに、最初に声をかけたのはエレノアだ。イライザが心細いだろうという気持ちからの行動であったが、どうやらイライザのなかでは「余計なお世話」に分類されたらしい。
 最初は、エレノアをはじめとする幾人かの女子生徒がイライザに声をかけていた。そのたびに、彼女が鬱陶しいとでも言いたげな態度をとるため、自然と誰もが声をかけなくなった。
 ところが、一人でぽつんとしているイライザの姿にジェラルドが興味を示す。一国の王子という立場もあり、正義感も働いたのだろう。
 ジェラルドが声をかけると、イライザは堰を切ったように話し始めた。中途半端な時期からの入学で勉強が大変だ、ほかの生徒は話しかけても無視をする、など。
 ジェラルドは婚約者のエレノアに相談するも、エレノア自身がイライザとの付き合い方に悩んでいた。
 そんなエレノアの様子が、ジェラルドにはイライザを仲間はずれにしているように見えたのだ。
 だからジェラルド本人がイライザの面倒をみ始め、それによってジェラルドの側にいた魔法貴族の子息たちも、イライザとの距離を縮めていく。そうなれば、ほかの令嬢たちも騒ぎ始め――。
(え? これって、ジェラルド様がまんまとイライザ様の思惑にはまってしまったのでは?)
「――セシリア、朝よ。起きなさい」
 鈴を転がすような声が聞こえて、セシリアは目を開ける。
「あ、お姉さま。おはようございます」
「おはよう、セシリア。あなたがなかなか目覚めないから、アニーが困っていたわ。昨日は、よっぽど疲れていたのね」
 アニーがいくら声をかけてもセシリアが起きないため、困り果てた彼女は両親とエレノアに助けを求めたようだ。そしてその話を聞いたエレノアが、わざわざ部屋にまでやってきて、こうやって起こしてくれたわけだ。
「さあ、セシリア。お父様もお母様も、お腹を空かせて食堂で待っているわ。さっさと着替えましょう」
 そう言ったエレノアは、部屋の隅に控えていたアニーに目配せをする。
 あれよあれよといううちに、セシリアの身支度は整った。
 白いレースのエプロンがついている、ラベンダー色のエプロンドレスだ。髪の毛は、エレノアが手早く三つ編みを二本作ってくれた。
「では、食堂にいきましょう」
 エレノアとしっかりと手をつないで、目的地に爪先を向けた。
 食堂にはすでに両親がそろっていて、にこやかにセシリアたちを迎えてくれた。
「おはよう、エレノア、セシリア」
「おはようございます、お父さま、お母さま」
「おはようございます。今日のセシリアはお寝坊さんだったのよ。わたくしが起こして、やっと起きたの」
 執事が椅子を引きエレノアは自然と座るものの、口だけはしっかりと動いている。
「昨日は慣れない場で疲れたのだろう。今日はゆっくりと休んでいなさい」
 父親のその声が合図になったかのように、食事が運ばれてきた。
 セシリアがぐっすりと眠りこけてしまったのは、わけのわからない記憶のせいだ。
 夢だと思っていた。いや、あれは間違いなく夢だった。ただ夢から覚めても、内容はばっちりと覚えている。
 横目でチラリとエレノアを確認すると、目が合った。
「セシリア、こちらのジャムも美味しいわよ」
 エレノアがオレンジ色のジャムを手渡した。
 婚約破棄をつきつけられて落ち込んでいると思われたエレノアだが、そうでもなかった。しかし、夢の中の彼女は間違いなくジェラルドが好きだった。いや、執着かもしれない。そのいきすぎた歪んだ愛の先に待っているのが処刑である。
(早ければ今日。婚約解消の書類が届くはず。だけど陛下もお姉様のことを気に入っているから、意思確認のような書類だったはず)
 エレノアがすすめてくれたジャムをパンにたっぷりと塗りつける。
(婚約解消による慰謝料が提示されるけれど、それが最低金額で……ほかに領地をという話だったけれど、その領地も王家がもてあましている場所で……。だからお父様は婚約解消するメリットが見いだせず、陛下の思惑とおり、お姉様とジェラルド様の婚約は解消されず、このあとも続くのよね)
 ジェラルドがあの場で婚約破棄宣言をしても、簡単にそれが実現されるわけではない。国王も巻き込んで、後腐れないように手続きする必要があるのだが、やはり国王は二人の婚約解消については反対なのだ。
 王太子妃として、エレノア以上にふさわしい女性はいないだろう。魔法公爵家の娘で、父親は外交大臣を務め国内外に顔が広い。母親も、独身時代には学園で教鞭をふるっている。また、水魔法を繊細に操るため、水害が起こったときにはたまに呼び出される。この国の水瓶を守っているのはケアード公爵夫人とも、裏ではささやかれているほど。
「セシリア。今日はたくさん食べたのね」
 そんな母親の声で我に返る。
「はい」
 元気よく返事をして、牛乳をごくりと飲んだ。

 朝食後、少し休んでセシリアは、エレノアを庭園の散歩に誘った。
「お姉さまは、もう、学校に行かなくていいんですよね?」
 気づいたら、セシリアはそう尋ねていた。
 昨日は卒業パーティーだった。卒業パーティーには卒業生の家族も参加できる。だからセシリアも両親と共にあの場にいて、エレノアの門出を祝う予定だった。
「そうね。卒業したからね」
 その口調は、どこか寂しそうにも聞こえた。
 ふわりと風が吹き、花の香りをのせてくる。
「今日から、セシリアはお姉さまと一緒にいられるのですよね? お姉さまはずっとお屋敷におりますよね? セシリアにも魔法を教えてください」
 セシリアはエレノアが大好きだ。謎の記憶が流れ込んできても、セシリアの本質がかわるわけではない。たった七歳の、姉と両親が大好きな女の子。
 毎朝、学園へと向かうエレノアの後ろ姿を寂しく見送っていた。エレノアが学園に通わなければならないのもわかっていた。そしてセシリアも、十二歳になったら学園に通い始める。
 だけど、そこにエレノアの姿はない。学園に大好きな姉と一緒に通えないのが不満だった。年が離れているから仕方ないのだが、それでも姉と同じ制服を着て、一緒に学園へと向かいたかった。
「そう、ね。今日からはセシリアと一緒にいられるわね。いつの間にか、この庭園にもたくさんの花が咲いたのね」
 庭園の花を愛でる時間もないほど、エレノアは勉学に励んだ。朝早くから、夜遅くまで。王太子の婚約者としてふさわしい振る舞いをと思っていたところもあるのだろう。
「お姉さま。このお花は、わたしがお母さまと一緒に植えたのです」
「まぁ、きれいね。それにこのお花……水魔法がかけられている?」
「そうです。お母様が水魔法の研究だといって、水やりをしなくても育つお花にしました」
「そうなのね」
 その場にしゃがみ込んだエレノアは、水魔法がかかっている花をじっと見つめた。
「こんな身近なところに、模範となるような人がいたのね。それに気づかないとは、わたくしも浅はかだわ」
 エレノアが何を言っているのか、セシリアにはさっぱりとわからなかった。
「よし。これからはこのエレノア様が、かわいいセシリアにしっかりと魔法を教えてあげましょう」
 わざとらしいくらいの明るい声だ。
 そしてセシリアは「やったぁ」と元気に飛び跳ねる。
「あ、お姉さま。さっそくですが、お姉さまに教えていただきたいことがあります」
「なあに?」
「ええと。初めて来たところなのに、前にも来たことがあるって思うことありますよね?」
「そうね。それは前世の記憶が関係しているとも言われているわ」
「そうなんですか?」
 前世の記憶。この世界では魂が輪廻回生するとも言われている。セシリアがセシリアとして生を受ける前に、『ほかの誰か』として生き、その魂がセシリアとして生まれ変わった。だから、初めて訪れた場所であるのに、以前にも来た感じがしたのは、セシリアとなる前の『ほかの誰か』の記憶が関係しているのだと、エレノアは言った。
「前世の記憶が()えるのは、過去視(かこし)という魔法の一種ね。これは使える属性とは別に身につく魔法だけれども、本当に選ばれた者しか使えないのよ。わたくしも、この魔法を使える人を知らないわ。学園の先生方も、国家魔法使いも、過去視を使えるという話を聞いたことがないもの。ほかにも、未来が視える未来視(みらいし)、遠くのものが視える遠視(とおし)なんかもあるわね」
 いつの間にか、エレナによる魔法談義となっていた。だけど、こうやって丁寧に教えてくれるのは、エレノアがセシリアを認めている証拠。できるだけセシリアにもわかりやすい言葉で、という配慮も伝わってくる。
「昨日。お姉さまのパーティーに行ったとき、学園のホールに入ったのは初めてだったのですが、ここに来たことがあるかもって思いました」
「そうなの? あ、だから早く帰りたいって言ったのかしら? 過去の記憶が視えて、気持ちが悪くなってしまったとか?」
「それは、本当に疲れただけです。たくさん人がいたからです。セシリア、あんなにたくさんの人がいるのは、初めて見ました」
 公爵邸で開くパーティーは、こぢんまりとしたものが多い。それにセシリアはまだ夜会にも参加できない。だから、昨日の卒業パーティーが、セシリアの知るパーティーでは一番参加人数が多いものだった。
 それでもエレノアは、目を細くしてセシリアに視線を向ける。それはまるで何かを疑っているように、怪しんでいるようにも感じた。
「エレノアお嬢様。ここにいらしたのですね」
 そう声をあげながら走ってきたのは、執事の息子のケビンだった。まだ年若い彼は、執事としての仕事を学んでいるところだ。また、その若さを生かして、先触れとして駆けずりまわることもある。
「どうしたの? ケビン」
 彼の姿をとらえたエレノアは、すっと立ち上がった。
「旦那様がお呼びです」
 その一言で、エレノアの顔が強張った。
 セシリアは、すかさず姉の手を握る。
 驚いたようにセシリアを見下ろしたエレノアだが、その表情は凜としていた。

「なんだ。セシリアも一緒なのか」
 父親の執務室に入ると、セシリアの姿を見つけた父が、開口一番そう言った。
「お父様。セシリアには聞かせられないようなお話を、わたくしにするおつもりですか?」
「いや、そうではないのだが。まぁ、座りなさい」
 促されたソファにエレノアとセシリアは並んで座る。目の前には両親が座っているものの、母親の目はどことなく憂いていた。
「ジェラルド殿下との婚約の件だ。婚約解消の手続きに必要な書類が送られてきたのだが……」
 セシリアもテーブルの上に並べられた書類を、じっくりと観察する。
(思っていたよりも早かったわね。陛下も、さっさと決着をつけたいのね)
「もし、婚約を解消するならば、ジェラルド殿下側の落ち度ということで慰謝料を支払うと。だが、提示された金額はたったのこれだけだ」
 あのような場で婚約破棄宣言を一方的にしたのはジェラルドだ。特にその理由の説明もなかった。いや、あのあと、くどくどと理由を並べ立てようとしたのかもしれない。それより先に、セシリアがエレノアの手を引っ張って、会場から抜け出した。
「まるでエレノアにはこれだけの価値しかないような仕打ちだ。それにもう一つ。国預かりの領地もという話だが、このリストを見てくれ」
 エレノアが身を乗り出したところで、セシリアも真似をした。
「この場所……」
「さすがエレノアだな。ここにある土地は、国としてもたいした収入にならず、手を焼いている場所だ。そのような場所を我々に授けると……」
「つまり陛下は、お姉さまが王太子殿下と婚約解消をされては、困るということですよね?」
 セシリアが口を挟むと、三人から視線が集まった。
「セシリア?」
「お姉さま。陛下は認めたくないのですよ。お姉さまと王太子殿下の婚約解消を。だから、こんな安っぽい慰謝料と手のかかる場所を提示してきたのです」
「つまり、エレノアにはまだ希望があるということだな? ジェラルド殿下とやり直せるかもしれない」
 父親の言葉に、セシリアは力強く首を横に振った。勿忘草の髪も、一緒に揺れ動く。
「お父さま。昨日の殿下の様子を思い出してください。殿下の隣には誰がおりましたか?」
 セシリアの言葉に、三人は黙り込む。
「本来であれば、あの場所にはお姉さまがいるべきでした。それなのに、なぜかイライザ様がいらっしゃいました。それにイライザ様が着ていたドレス……あれは、殿下の瞳と同じ色のドレスです」
 たたみかけるセシリアの言葉に、三人は大きく頷く。
「お姉さまは、まだ殿下のことが好きなのですか?」
「え?」
 セシリアの問いにエレノアは顔をあげて、はっとする。
「わたくしが殿下を好きかどうか? 考えてもみなかったわ。婚約が決まって、立派な王太子妃にならなければと、そんな気持ちでいっぱいだったし」
「お姉さまは殿下に未練がありますか? 殿下と結婚したいですか? お姉さまと婚約しているのに、ほかの女性を隣に置くような殿下と、結婚したいですか?」
 セシリアがぐいぐいとせまると、エレノアも真剣な眼差しで考え込む。
 しかし、それに声をあげたのは母親だった。
「私は反対ね。このまま殿下と婚約関係を続け結婚したとしても、エレノアが幸せになれるとは思えません」
「お母様?」
 今まで沈黙を貫いていた母親が意見を口にしたことで、エレノアも動揺を隠せない。
「だけど、あなたが殿下のことが大好きで、信じたいと言うのであれば別。この婚約を続けるかどうかは、あなたの気持ち次第よ。親としては、やはり娘には幸せになってもらいたいの。私たちのようにね」
 驚いた父親は顔をあげ、愛する妻の顔を見る。夫婦の間には、なんともいえない甘い空気が漂い始めた。
「……そうですね。お母様のおっしゃるとおり。わたくしは、殿下との婚約解消を受け入れます。慰謝料とか領地とかいらないですが、くれるというのであればもらっておきましょう」
「だが、どこを選んでも収入の見込めない土地だぞ?」
「お父さま。土地のリストを見せてください」
 セシリアが明るく声をあげた。
 父親は「お前にわかるのか?」という表情も出さずに、言われたとおりにリストをセシリアに手渡した。幼くても一人の人として扱ってくれる。
 リストをエレノアと一緒に確認する。
(そうだわ。アニメ版のオープニングには、さとうきび畑が描かれていた。クリエーターが沖縄出身で、ほんの遊び心だったと。ええと、その場所はケアード公爵領からも近い……)
 謎の記憶が蘇ってきた。
「フェルトンの街がいいです。ここなら、ケアード公爵領から近いです」
 また三人の視線がセシリアに集まった。
「フェルトンか……まぁ、どこも似たり寄ったりだからな。だったら、領地から近いという理由で選んでもいいな」
 だけど、エレノアの視線は鋭い。まるでセシリアを睨みつけるかのよう。
「お姉さま。どうされました? お顔が、怖いです」
「セシリア。あなた、視えてるの?」
「はい? お姉さまの顔ならばっちりと見えています」
「違うわよ。もしかして、未来が視えているの?」
 間違いなく、焦った気持ちが顔に出た。しまったと思った瞬間、両親が驚いた表情をしたからだ。
 七歳の女児に演技など、どだい無理な話だ。ずばりと指摘されたら、誤魔化せない。
「エレノア、どういうことだ? セシリアには未来視が備わっていると?」
「おそらく。セシリア自身は気づいていないかもしれませんが……」
 そこでエレノアは説明を始めた。
 まずセシリアが学園の大ホールで既視感を覚えたこと。それをセシリア自身が疑問に思い、エレノアに尋ねてきたこと。
 さらに会ったこともないイライザの名前を言い当てたこと。そして今、土地のリストから迷わずにフェルトンの街を選んだこと。領地から近いと言っているが、絶対にほかの理由があるはずだと。
 セシリアの顔はしだいに青ざめていく。昨日、脳内に流れ込んできた謎の記憶。そして今朝方、夢だと思っていたエレノアの記憶。
 それが過去視や遠視といった魔法の力である可能性が出てきた。そしてこの能力は選ばれし人間にしか使えない。
「うぅむ」
 腕を組み、眉間に深くしわを刻む父親は、大きくうなった。母親も両手をしっかりと組み合わせ、はらはらとしている。
「エレノアの話を聞く限り、まだ半信半疑のところはあるが……。セシリア、本当の理由を言いなさい。フェルトンの街を選んだ、本当の理由」
「お父さま、怒らない?」
 セシリアとしてはそれが怖かった。流れ込んだ記憶をしゃべったら、怒られるのではないか。七歳の女の子が考える内容としては妥当である。
「怒らない。怒るわけがないだろう?」
 やさしく微笑む父親を見て、セシリアはほっと胸をなでおろす。隣からエレノアが手を伸ばし、セシリアの手をゆるりと握りしめた。
 セシリアは流れ込んできた記憶の一部――フェルトンの街にはさとうきびがあり、さとうきびから砂糖が作れると説明した。
「砂糖?」
 父親だって耳にしたことがない言葉なのだろう。セシリアだって、謎の記憶――前世の記憶がなければ知らない言葉だった。
「甘味料の一つで、白い粉のようなものです。今は、料理に甘い味をつけるために、果物の果汁やはちみつを使っていますけど、やはり独特の風味があります。ですが、砂糖にはそれがありません。クッキーやケーキに使うと、とっても美味しく作れます」
「まぁ、それは画期的ね」
 甘いものには目のない母親が、瞳を輝かせた。
「まだこの国には砂糖がありません。フェルトンの街にあるさとうきびで砂糖を作り、売ればそれなりの収入になるかと思います」
 セシリアの言葉に、エレノアはぱちぱちと目を瞬いた。信じられないとでも言いたいようだ。
 父親も右手で口元をおさえ、何やら考え込んでいる様子。
「やはり、エレノアの言うとおりかもしれないな。セシリアには未来視、もしかしたら過去視なども備わっているのかも知れない。だが、幼いがゆえ、その力をうまく制御できないのだろう。誰かがきちんと導いてやらねば……」
 まるで独り言のように呟いた父親は、まっすぐにセシリアを見つめてきた。
「セシリア。その力はとても危険なんだ。使い方を間違えれば、怖いことが起こる。だから、その力で視えたことは、家族以外にはけしてしゃべってはならないよ?」
「はい」
 セシリアは力強く頷いた。