「っ、ふざけんな!お前、俺が少しでも遅れてたら死んでたかもしれないんだぞ!」


「ま、しば……?」


今、俺が真柴に抱きしめられていると自覚するのに、そう時間はかからなかった。

だって、真柴の声が、すぐ耳元で聞こえる。

俺の肩に、真柴の腕が回っている。



「こんなハチマキだけのために……」

「お、俺にとってはハチマキが大事だったんだよーー……」

「なくたって俺がいるんだからいいに決まってるだろ!」

「っ……!」



珍しく真柴が声を荒げる。俺の背中に回された真柴の腕は、震えていた。

そして、こんな状況でさえ真柴の言葉にいちいち反応して、顔に熱が集中してしまう俺はもう、自分の気持ちを受け入れざるを得なかった。



「命は、ひとつしかないんだよ……」



弱々しくなった真柴の声は、かすかに涙混じりで。

俺がこんなことを言わせてしまっている、という罪悪感と悲しさが、俺の中で静かに交錯した。



「頼むから、死ぬな……」


「……悪かった」



迷いながらも、俺は真柴の大きな背中に手を回したーー……。