「……触んなよ、きたねー手で」

「誰のせいだよ、あぁ?」


さっきとは立場が大逆転をした今の状況。

俺は今、4人の他校の生徒に囲まれるという、見事にいじめの構図が再現されていた。

そんな俺のそばの地面には、雨に濡れて変色している俺の教材とリュックサック。


「つーか、コイツ真面目に勉強してんの?こんな見た目で?」

「やっべー!ウケんだけど」


4人は、ギャハハ!と下品な笑い声を土砂降りの中響かせた。

抵抗はしたいが、今の状況で4人を一気に相手するのは難しいだろう。しかも、あいにく今は、2人がかりで拘束されている。

できるだけ逃げるなんてことはしたくない。

ここで逃げれば、またコイツらは真紘のことを探しにくる。絶対にだ。


そんなこと、俺がさせるわけない。


「コイツのことどーする?」

「ただでは帰せねーよなぁ?」


少しでもコイツら2人の拘束が解ける隙間があれば……打開策はあるというのに。


「チッ、さっさとしろよ」

「んだと、オラ!」


俺の舌打ちに腹を立てた奴は、ガッ……と鈍い音を立てて、俺の頬に拳をぶつけた。


「……決めた」


そして、静かに呟く。


「コイツは袋叩きにする」

「……」


俺を見下ろした三日月型の瞳が、ギラリと怪しく光った。