ルームのドアを開けると、目に飛び込んできたのはやはり真柴。

さっきとは変わらず、多くの女子たちに囲まれていた。

俺は、そんな真柴に嫉妬する権利もないって。

あの女は、そう言いたかったのか。


真柴は、帰ってきた俺をチラリと見ただけで、何も言ってはこなかった。

まあ、そりゃあそうだよな。

俺と真柴には、気まずい空気がずっと流れている。なんなら、今日の真柴はずっと不機嫌そうで。


もしかして、俺と同じ空間にいることが苦痛なのだろうか。


あぁもう、なんで俺はそんなネガティブなことばっかり考えてるんだ。

余計な思考を振り払うかのように頭を軽く振って、ソファに置いてあったスクバを乱暴に掴んだ。


「あれ、千羽帰んの!?」

「え?」

「あ、マジで?」


立ち上がってドアに手をかけた俺を見て、すかさず引き止められる。


「あー、悪い、寄るとこあんだわ」

「えー、千羽くん帰っちゃうの?」

「連絡先まだ教えてもらってないんだけどぉ」


本日何度目かもわからない「無視」を決め込み、俺はドアノブを回した。

真柴の方を、なるべく見ないようにしてーー……。