昼を過ぎてジリジリと俺たちを容赦なく照りつける太陽は、もちろんのことだが、地球の光だ。
太陽があるから、物が見えるし、歩けるし走れる。
でも、太陽をこんなにうとましく思ったのは初めてだった。
日に焼けていない真っ白な肌。
それなのに、腹筋はバッキバキに割れていて、二の腕は想像もできないくらいに筋肉が盛り上がっている。
極めつけには、腕に浮き上がるいくつかの血管。
そんなものが、いつもアイツの制服の下に隠れていたのかと思うと、俺はもう真柴を直視できない。
今、真柴のどこを見ても俺には刺激が強すぎて。
それに、明らかに真柴に向けて目をハートにする女子を見るのも、「真柴くん!」と呼ぶ声を聞くのも、俺にはキツくて。
太陽よ、真柴を照らすな。
真柴の上裸姿を誰も見れないようにしてくれ。
俺は、必死に懇願していた。
ーーそれでも、俺だって見たいものは見たい。不可抗力なのだ、仕方ないではないか。
すぅ、と息を大きく吸って視線を上げる。
「っ、だぁぁ!」
それなのに、やはり俺には無理だった。
こんな気持ちを持ったまま真柴を見るだなんて、死にたい……。このままどこかへ行ってしまいたい……。
頭を抱えてしゃがみ込んだ俺の目線の先には、砂利。
そうだ、俺なんて一生砂利を見ておけばいい。揺れ動く真柴への気持ちを抱えたまま、アイツを直視するだなんて、俺にはできねえ。
《おぉっと、赤組の勝利だぁーっ!》
耳をつんざくような、そんなアナウンスと共に、グラウンドが大歓声と熱気で包まれた。
赤組の喜ぶ声が聞こえた。
きっと今頃、真柴はみんなに胴上げでもされているんだろう。それを、俺はなぜか見ることができない。
俺、やっぱり変だ。ーー真柴のことが、好きかもって、思った瞬間から。
「真柴くんっ、ハチマキ交換しないっ?」
「私、写真撮りたいです……っ」
「真柴先輩、私も!」
あちらこちらから、真柴の声を呼ぶ女子の声が、いやでも耳に入ってくる。
ああもう、なんなんだよ。
俺の周りで、真柴真柴って騒ぐんじゃねえよ……。
女子に囲まれる真柴を想像すれば、今までにないくらい心臓が握りつぶされたように痛くなる。
「っ……好きだ……」
自分の陰で暗くなった地面を睨みつけながら、ボソリと呟いた。
ーー確信に変わった瞬間だった。