「あら、貧血と睡眠不足、栄養不足ねー。ちゃんと食べて寝てるかしら?」


「先生、真柴は大丈夫なのかっ?」


眉を八の字にして首を傾げた養護教諭の先生に、俺は食い気味に身を乗り出す。身を乗り出しすぎて、危うく背もたれのない丸椅子から落っこちるところだった。


そんな俺は、先生はクスッと笑いながら頷く。


「ええ、ちゃーんと休んで温かいごはんを食べたら、元通りになるわ」


「本当か!」


再び真柴の眠る顔を見るけれど、やはりさっきから変わったところはなく。顔色も悪いままだった。


「……」


ぐ、と拳を膝の上で握りしめる。

もっと俺が早く気づいていれば。昨日の時点で、「やりすぎだ」って、止められていれば。


真柴がこんなふうにしんどくなることなんて、なかったのだろうか。



「……真柴くんのこと、好きなの?」


「ぶっ」



飲み物なんて何も飲んでいないのに、唾が喉に引っかかって咳き込む。



「……は?」



気の抜けた声を漏らしながら、ニッコリと笑う先生を見つめる。

先生の奥にある窓ガラスに反射する俺が今、どれだけマヌケな表情をしているのかなんて、知りたくもなかった。



「な……んで、」



砂漠のように乾いた喉から振り絞った声は、これだけ。

なんでわかったのか。


違う。


なんでそう思うのか。


違う、違う違う。全部違う。




ーーなんで俺は、この質問に即答できない。



おそらく前者の意味で取ったのだろう、先生はきょとんとした表情で俺を見つめたあ


「え?だって、あなたが真柴くんを見る目が……あら、いけない!職員会議の時間だわ。ごめんなさいね、数十分ほど保健室を開けるわね」


パタパタと慌ただしい足音が、遠くに消えていく。その時間が、俺には何時間にも感じられた。