教室の中は、思ったよりも静かだった。ーーいや、静まり返っていた。
そりゃあそうか。
俺が来たんだから。
「魁くんの席ここだから。俺はここ!」
「前後じゃねーか」
「そうだよ、魁くんが来ないから、俺後ろいなくて寂しかったんだ」
「へー」
クラスメイトは、あっけに取られたような表情で俺と高杉を交互に見つめている。
しかし、高杉はそんなクラスメイトの自然なんて気にも留めていないかのように俺に席を案内してくれた。
コイツ、どう思われてもいいのかよ……?
手持ち無沙汰な俺は、とりあえずバッグを机の横にかけて席に着いてみることに。
……なんとも落ち着かない。
椅子は硬いし、背もたれの角度は直角だし。
最後に学校の椅子に座ったのなんて、いつだったっけ?入学したての頃とか、そこらへんだったか。
久々すぎて、席でのくつろぎ方すら忘れてしまった俺は、ただただ席に座って前を向いているだけの優等生のような姿となってしまった。
いや、金髪だから、優等生ではないか。
「何かあったらなんでも言ってね、魁くん」
「おー」
少しずつざわつき始めた教室内では、やはり俺の話題が飛び交っている。
まあ、仕方ないか。
……それにしても、教室ってこんな感じなんだ。
黒板には、ボランティア募集や、研修体験などの張り紙がたくさん貼ってあったり、窓からはグラウンドが見えたり、クーラーが思ったより大きかったり。
いろんなものが珍しくて、教室にいることは苦痛ではなかった。
「おもしれー……」
思わずこぼれた独り言に、前に座る高杉がクスリと笑った。