「っあー……まじでダセェ、俺……」


あの河川敷での出来事から、すでに数日がすぎていた。

いつも通りの学校、生徒たち。

そして俺は、生徒玄関の前でひとりウロウロと徘徊していた。

登校してきた他の生徒たちから、ヒソヒソと何かを言われているが、そんなのは俺にとっては日常茶飯事なことなので、特には気にしない。

いいや、そんなことよりも、今は自分のダサさに自分を殴ってやりたいくらいだ。





決して教室に入るのが怖いとか、そういうんじゃない。





なんだよ、こんなところでビビってるなんて、全く俺らしくないじゃないか。

そう自分を奮起させて、「よし」と呟くものの、足が思うように動かないのだ。


「よし」と呟いて進もうとするけど、結局進まなくて戻ろうとして。その一連の動作を、今日だけで何十回と繰り返している。



ーー居場所なら、ここにあるけど。



そんな真柴の言葉が、ふと脳裏に蘇る。

俺の、居場所……。

いや、ダメだ。そんなすぐに頼るだなんてだせえことはしたくない。

一度教室に行ってみて、それでも無理だと思ったら行くんだ。


余計な考えを振り払おうと、ブンブンと頭を横に振っている時だった。


「あれ、魁くん?おはよう」

「へっ……た、高杉……」

「いやー、ちょっと暑くなってきたねー」


振り返れば、ちょうど高杉が登校してきたところらしく、俺を見て笑顔で駆け寄ってきた。

そして、当たり前のように俺の隣に並ぶ。


「……そうだな」

「俺、夏汗かくから嫌いなんだよね」

「へー……」

「……魁くん?」


ドキリと心臓が大きく音を立てる。

微妙なリアクションしかできない俺に腹を立てたのだろうか、高杉は、怪訝そうに俺を見ていた。


「し、仕方ないだろ。だっ……ダチとしゃべるのなんて、小学校以来ーー」

「あ、ちがうちがう。そういうことじゃなくて」

「あ?」


一気にしゃべったせいで、動悸がおさまらない。朝から友達としゃべるなんて、俺にはまだハードルが高すぎる……!

バクバクと音を立てる心臓をドンっと叩いて、深呼吸をすると、高杉は校舎の方を指さした。



「ずっと止まってないで、行こうよ、教室」


「お、おう……」



強力接着剤を塗りたくられていたんじゃないかと思ってしまうくらい、地面にへばりついていたはずの足が、今度はすんなりと動いた。