「居場所なら、ここにあるけど」
「っ、」
「俺がもう作ってる。いつでも来ればいい」
俺が生きてきた人生の中で、聞いたこともないくらいの優しい声色。
まるで、それが俺の胸の中を満たすかのようにスッと黒い感情が消え去っていく。
「ーーま、独りじゃないってことだけ覚えとけ」
それだけ言うと、真柴は寝転がっていた体勢から一気に立ち上がった。
「独りじゃ、ない……」
「あぁ」
顔を上げると、俺を見下ろす真柴は優しく微笑んでいた。
「さ、そろそろ帰るぞー。俺、今体調悪いことになってっから」
ため息混じりにそういう真柴は、グンと伸びをして歩き出した。
その背中を、ぼうっと眺める。
ーー居場所ができた。
空は、雲ひとつない青に澄み切っていた。