気づけば、すでに昼を過ぎていた。
そばにある河原の水面は、太陽に反射してゆらゆらと光って見える。
あれから俺たちは、すぐそばにあった河川敷の芝生に座ってただぼうっと時間を過ごしていた。
「いる?」
「……は?」
このまま、なにもせずに生きてえな。ーーそんなことを考える俺の目の前に差し出された、いつのまに買ってきて食べていたのやら、食べかけのアイス。
「アイス、食べかけだけど」
なんだよ、食べかけって……。
しかも、関節キスだぞ……?こいつ、そういうコト気にしないのかよ!
関節キスだなんてワードが頭の中にこびりついて、離れてくれない。
「い、いらねえよバーカ!」
「あ、そ?」
ブンッ、と勢いよく顔を背けると、隣に座った真柴が肩をすくめたような気がした。
「あーあ、サボっちまったな。学校」
俺、生徒会長なのに。なんてことを呟きながら、ごろんと寝転がる真柴。
そういう割に、後悔してなさそうな表情だ。
「サボるのも案外悪くないな」
食べ切った棒アイスの木の棒を咥えながら、真柴はふっと笑った。
「先生に怒られたりしないのか?」
こんなところでサボってるだなんてバレたら、きっと真柴は……。
「俺、体調悪いことにして早退してきたから」
「はっ?」
コイツ、まじかよ……そんな言葉すらも喉からは出ず。
ドヤ顔で親指を立てる真柴に、俺は呆れることしかできなかった。
生徒会長がこんなで、本当にこの学校は大丈夫なのかよ……?
「だから俺のことは心配しないでいい」
「別に心配してたわけじゃ……」
「はいはい、そうだなー」
グリグリと頭を撫で回される。
「やめろってそれ……」
「あー?聞こえねー」
鬱陶しい、そんな小言を漏らしながらも、嫌がっていない自分がどこかにいた。
俺、最近おかしいだろ……。
「もうケンカすんじゃねーぞ」
ふ、と、俺の頭を撫でていた真柴の手が止まる。
「……」
ーー何も言えなかった。だって俺は……。
「……返事は」
「……なんでそこまでして俺に構うんだよ……」
ケンカの中でしか生きられない、小さい人間だから。
ケンカという世界でしか、俺の人生は進まない。成り立たない。
そんな世界を、自ら捨てるんだ。
ーー怖いに決まってる。
ケンカをやめることが怖いだなんて、俺は本当にどうかしている。
なのにやめたいと思ってる、そんな自分の中の矛盾が、たまらなく苦しい。