「優等生だからって俺らに勝てると思ってんじゃねーよ!」

「お、おいっ……!」


危ない、真柴……!そう叫ぼうとしたのに、それは喉でぴたりと止まって。

真柴は、飄々とした表情で、チンピラたちによって乱暴に振り回されるナイフを軽々と交わしていく。


「は……」


あぁ、そうだ。忘れていた。

アイツ、ピアスホール大量に空いてたんだった。そんなヤツが弱いわけがない。

真柴の本当の姿がどんなかは知らないけど、絶対にケンカをしたことがないというわけではないだろう。


というか、こんな強そうなヤツが生徒会長で学校の治安は大丈夫なのかよ。

まあ、半分は俺が悪くしているようなものだけど。


「いでででっ!」

「ぎゃっ!」


「ダセーことしやがって」


そうこう考えているうちに何が起きたのか。

気づけば、真柴は3人もいるチンピラどもを軽々と拘束していた。
近くの芝生には、綺麗にへし折られて湾曲したナイフが転がっている。

どんなことしたら、あぁなるんだよ……。

開いた口が塞がらないって、こういうことなんだな。


「ゆ、許してくれっ!」

「もうしない!」

「すみません!」


必死に許しを乞う3人組は、涙目でドタバタと真柴の腕から逃れようと必死にもがいていた。


「だって」


「へっ……?」


『だって』って……。俺に主導権を全部握らせるのかよ……。


「許すのか?真柴は、コイツらを」

「……」


真柴は、さっき俺に笑いかけた時とは比べ物にならないくらい、無表情だった。そんな真柴に、一瞬背筋が伸びた。


「も、もうしねーなら……」


許さない、だなんて言ったらこの先どうなるかわからない。
ーーそのくらい、真柴の表情の裏に、何か暗い色が隠れていたんだ。


俺がそう答えた瞬間、真柴はチンピラたちの拘束を解く。


「よかったな、許してもらえて」


おそらくニコリと笑った真柴を見て「ひ」と短く情けない声を上げた3人は、一目散にその場から走って逃げていった。

俺の位置からは、真柴の背中しか見えないから真柴がどんな表情をしていたのかは知らないけど、なんで笑顔を見て怯えたような表情してたんだ……?


本当に、真柴って何者なんだよ……。