「あっれー?最近見かけなかった千羽じゃーん」
「学校はサボったんですかー?あ、俺らもサボりだったわ」
「まあ、お前みたいなのが学校行ったところで、受け入れてもらえるわけないもんなぁ?」
ぎゃはは!と下品な声を上げて笑うチンピラたち。
「……誰だっけ?」
「あぁ?」
「弱えやつの顔と名前って、覚える必要ねーじゃん?」
やっぱり俺は、ここでしか生きられない。
それを改めて実感して、勝手に傷つきそうになって。俺って本当にバカなヤツ。
「てめぇ……いつも我慢してたけど、もう限界だわ」
「今日は半殺しだ、覚悟しとけ千羽ァ!」
頭に血を上らせて完全に怒ったチンピラたちがポケットから取り出したものはーー……。
「……は?」
おいおい、嘘だろ。まさか、こいつらこれでやる気かよ……。
心臓がドクリと嫌な音を立てる。
だって、チンピラどもが手に持って構えていたのはーー。
「ナイフだなんて物騒なもん使うんじゃねーよ、チビども」
その瞬間、そんな声がしたかと思えば頭に載せられる大きな手のひら。
そしてーー。
「おまえ、なんで……」
俺の横に並ぶ、背の高い人影。ソイツーー真柴は、俺を見て微笑んだ。
「お前が学校出て行くとこ、窓から見えたから」
なんだろう、この気持ちは。
真柴を見た瞬間、安心して、嬉しくて。……でも少しだけ恥ずかしくて。
心臓が、いてぇ……。
「急になんだよテメェ!」
「邪魔しやがって!」
チンピラは、相変わらずナイフを構えて今にも飛びついてきそうな雰囲気だ。
これじゃあ、真柴が危ない。
ーーそれなのに。
「あぶねえって、」
「いいから」
「っ、なんで!」
なにより、真柴に怪我をしてほしくないというのに。
真柴は、そんな俺の表情を見て、再び頭をガシガシと撫でた。
「生徒会長なんでね」