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「おにーちゃん!ごじのチャイムなったねぇ!」


「お、ほんとだなぁ。そろそろおうちかえるか」


見れば、ついさっきまで青かった空が、もう藍色とピンクの混ざったような夕焼け空に変わっていた。

そして、毎日の5時を知らせるチャイムが街に優しく響き渡る。



「じゃ、俺もそろそろ帰ろうかな。いやー、すっごく楽しかったね」

「お前が一方的にしゃべってただけだろうが」

「またまた、魁くんだって笑ってくれてたじゃん?」

「知らん。さ、かえるぞ芽衣」

「はぁーい!」


笑顔で頷いた芽衣の手を握ると、高杉に背を向けた。


「魁くんまたねー」

「おー」


高杉、俺と同じクラスだって言ってたな……。月曜、教室入ればいんのかな?

ーーそこまで考えたところで、俺は足を止めた。


「おにーちゃん?どうしたのー」


高杉は、もしかしてアイツのこと知ってたりするのだろうか。

うちの高校はマンモス高で、多学年の連中なんて知るわけないか。

でも、もしかしたら……。


「高杉」


俺は、今まさに帰り路を歩き出そうとしている高杉を呼び止めた。


「なになに?」


もしかしたら知っているかもしれない。知らなかったなら、自分で確かめればいい。

すぐにこちらに駆け寄ってきた高杉は、きょとんとした顔で俺を見つめていた。




「真柴……って、知ってっか。3年の」



まあ、あまり期待はしないでおこう。

俺だって、他学年で知ってるやつなんて、たったこの前出会った、その真柴ってやつだけなんだから。きっと真柴も、他学年からは知られていないはずーー……。



「あぁ、生徒会長のこと?」


「へー……そいつってどんなーー……え?」



俺は、会話の中でひっかかったある単語を思い返す。

"生徒会長"?

それって、学校のトップみたいな存在の……?



「生徒会長……」

「そうだけど……知らなかったの?」



思わず生徒会長という単語をリピートする俺に、高杉は理解の追い討ちをかけた。



生徒会長……アイツが……?



「はァーーーーーッ!?」



5時のチャイムが鳴り終わるのと同時に、公園には俺の叫び声が響き渡ったーー……。