「はは、千羽くん、顔真っ赤じゃん」
「うるせぇ……」
まるでおちょくるように俺の顔を覗き込もうとするヤツの顔を押しのけると、俺は、さっきからずっと言えなかったことを、喉の底から振り絞った。
「ーーかったよ……」
「え?なんて?」
「悪かったって行ってんだよ!傘!断って!昨日!」
「え……」
ギリ……と爪が食い込むくらいに手のひらを握りしめながら、つむっていた目をおそるおそる開けば、そこにはあっけに取られたような顔。
あぁ、恥ずかしい。なんなんだよ、人と話すのってこんなに難しいのか。喧嘩ならいくらだってできるのに。
今すぐ消えたい羞恥心に歯を食いしばって耐えていると、目の前にいたソイツは、ニィッと嬉しそうに笑って俺に手のひらを差し出した。
「……あ?」
「あ?じゃないよ!ほら、はい!握手!」
「は?なんでそんなことお前と……」
握手なんて今時恥ずかしいことを……。握手を渋り続ける俺に、ソイツは無理やり俺の手をとって握らせた。
「は!?おま……」
「お前じゃないよ!俺、高杉司っていうの」
「……っ、あっそ。で?」
「今日から俺たち友達だよ!」
その瞬間、俺は少しだけ、ほんの少しだけ思ってしまった。
友達の手って、こんなにあったけえんだーー……って。