<momoさんのオリジナル曲、本当に本当に待っていました!>
<何度聴いても泣いてしまいます。歌詞もメロディも最高です>
<俺としては、なんと言っても歌声が堪りません。高音で少しハスキーになるのが今までにない感じで……気持ちが伝わってくるようでグッときます>
年が明け、冬休みも今日で終わりという昼下がり。桃輔はベッドに寝転んで、アンミツからのDMを読んでいる。顔が緩むのをどうしても抑えられない。
あの日――瀬名と気持ちを確認し合った日。帰宅し夕飯を食べて、風呂も終え部屋へ戻った頃にこのDMは届いた。もう二週間ほどが経ったというのに、こうしてくり返し読むのをやめられないでいる。
「気持ちが伝わる、って……瀬名のことだって分かってるくせにな」
瀬名との関係が変わった。ただの先輩と後輩だけじゃなく、彼氏と彼氏になった。
誰が告っただとかフラれただとか、誰が誰を好きだとか。そんな話を嬉々としてしているクラスメイトの気が知れなかったが。その気持ちも今はちょっと分かるな、なんて思ったりする。だって、日々がガラリと色を変えた。ふわふわとした気持ちが胸に溢れていて、体まで自分のものじゃないみたいに浮つく。自分だけじゃ抱えていられなくて、誰かに聞いてほしくなったりするのだろう。
まあ自分の場合は、あまり言いふらしたくないけれど。彼氏としての瀬名のことは、一ミリだって誰にも分けてなんてやりたくない。そんなことを考える自分自身に、なんだか恥ずかしくなってきた時だった。下のほうからチャイムの音が聞こえてきた。隣の部屋から桜輔が出ていくのが分かる。誰か来たのだろうか、宅配かもしれない。のんびりと構えていたのに。ふたり分の足音が階段を上ってきて、話し声が少し聞こえてきた。
「ん? この声……」
いやまさかな、なんて思いつつ、ベッドから起き上がった。なんとなく足音を忍ばせながらドアに近づき、ノブを回すと。思い浮かんだ人物がそこには立っていて。腹の底から「はあ!?」と声が飛び出てきた。今年初の大声だった気がする。
「モモ先輩!」
「いやいや……は? 瀬名、なんで……」
「えーっと、今日は桜輔先輩に呼ばれたと言うか」
「おい桜輔……」
「はは、モモすごい顔してるよ」
子どもの頃のようにとまではいかずとも、桜輔との関係は少しずつ元に戻ってきている。お互いを片割れだと認識して、そうできていることまでお互いに理解し合っている、というところだろうか。
とは言え、この事態は面白くない。瀬名が一目惚れしたのは桜輔――それは勘違いだったと知ることができたけれど。やはりふたりの間には、ただならぬ関係を思わせる空気がある。だって彼氏である自分すら、まだこの家に瀬名を呼んだことはなかったのに。
面白くない、心底面白くない。なんだか目が熱くなってきたような気さえする。それをごくんと飲みこみ、瀬名の隣で澄ました顔をしている桜輔を睨みつけた。
「確かに俺が水沢くんを呼んだけど。俺たちはモモに話があるんだ。ね、水沢くん」
「っす」
「…………? いや怖ぇよ、なんだよ……」
やっぱり自分たちが付き合うことになった、なんて言われたらどうしよう。体がバラバラに砕けて、もう二度と立ち上がれなくなる気がする。一瞬でそんなことを考えて視線を逃がしたら、誰かに手を握られた。瀬名だ。
「先輩、大丈夫っすか?」
「モモ、モモが考えてるようなことはないから。安心して? ね、部屋入っていい?」
こんな時にまで双子の力は発揮されるのだから、厄介だ。だが助かったな、とも思う。瀬名の温度もあって、ひとまず安堵することができた。
「……うん」
こくんと頷いて、部屋の中にふたりを招き入れる。
<何度聴いても泣いてしまいます。歌詞もメロディも最高です>
<俺としては、なんと言っても歌声が堪りません。高音で少しハスキーになるのが今までにない感じで……気持ちが伝わってくるようでグッときます>
年が明け、冬休みも今日で終わりという昼下がり。桃輔はベッドに寝転んで、アンミツからのDMを読んでいる。顔が緩むのをどうしても抑えられない。
あの日――瀬名と気持ちを確認し合った日。帰宅し夕飯を食べて、風呂も終え部屋へ戻った頃にこのDMは届いた。もう二週間ほどが経ったというのに、こうしてくり返し読むのをやめられないでいる。
「気持ちが伝わる、って……瀬名のことだって分かってるくせにな」
瀬名との関係が変わった。ただの先輩と後輩だけじゃなく、彼氏と彼氏になった。
誰が告っただとかフラれただとか、誰が誰を好きだとか。そんな話を嬉々としてしているクラスメイトの気が知れなかったが。その気持ちも今はちょっと分かるな、なんて思ったりする。だって、日々がガラリと色を変えた。ふわふわとした気持ちが胸に溢れていて、体まで自分のものじゃないみたいに浮つく。自分だけじゃ抱えていられなくて、誰かに聞いてほしくなったりするのだろう。
まあ自分の場合は、あまり言いふらしたくないけれど。彼氏としての瀬名のことは、一ミリだって誰にも分けてなんてやりたくない。そんなことを考える自分自身に、なんだか恥ずかしくなってきた時だった。下のほうからチャイムの音が聞こえてきた。隣の部屋から桜輔が出ていくのが分かる。誰か来たのだろうか、宅配かもしれない。のんびりと構えていたのに。ふたり分の足音が階段を上ってきて、話し声が少し聞こえてきた。
「ん? この声……」
いやまさかな、なんて思いつつ、ベッドから起き上がった。なんとなく足音を忍ばせながらドアに近づき、ノブを回すと。思い浮かんだ人物がそこには立っていて。腹の底から「はあ!?」と声が飛び出てきた。今年初の大声だった気がする。
「モモ先輩!」
「いやいや……は? 瀬名、なんで……」
「えーっと、今日は桜輔先輩に呼ばれたと言うか」
「おい桜輔……」
「はは、モモすごい顔してるよ」
子どもの頃のようにとまではいかずとも、桜輔との関係は少しずつ元に戻ってきている。お互いを片割れだと認識して、そうできていることまでお互いに理解し合っている、というところだろうか。
とは言え、この事態は面白くない。瀬名が一目惚れしたのは桜輔――それは勘違いだったと知ることができたけれど。やはりふたりの間には、ただならぬ関係を思わせる空気がある。だって彼氏である自分すら、まだこの家に瀬名を呼んだことはなかったのに。
面白くない、心底面白くない。なんだか目が熱くなってきたような気さえする。それをごくんと飲みこみ、瀬名の隣で澄ました顔をしている桜輔を睨みつけた。
「確かに俺が水沢くんを呼んだけど。俺たちはモモに話があるんだ。ね、水沢くん」
「っす」
「…………? いや怖ぇよ、なんだよ……」
やっぱり自分たちが付き合うことになった、なんて言われたらどうしよう。体がバラバラに砕けて、もう二度と立ち上がれなくなる気がする。一瞬でそんなことを考えて視線を逃がしたら、誰かに手を握られた。瀬名だ。
「先輩、大丈夫っすか?」
「モモ、モモが考えてるようなことはないから。安心して? ね、部屋入っていい?」
こんな時にまで双子の力は発揮されるのだから、厄介だ。だが助かったな、とも思う。瀬名の温度もあって、ひとまず安堵することができた。
「……うん」
こくんと頷いて、部屋の中にふたりを招き入れる。