隣を見るとすずねぇは泣いていた。それにつられて私の瞳からも涙が溢れてきた。あれだけどん底で、生きる意味も見いだせなくて、這いつくばって這いつくばってやっと部屋の中を移動できていた程度だったのに、今はこうやって二本足で立ち上がり、青い空の下軽快に歩いてここまで来られた。
ソウタくん、ありがとう。
HOPETOYS、ありがとう。
そしてなにより、すずねぇ、ありがとう。
私をこんな世界に連れてきてくれてありがとう。生きていてよかったって、これからも生きたいって思わせてくれてありがとう。
カウントダウンが終わり、一瞬の静寂、みんなの胸の鼓動が聞こえてきそう。
「行くぞーっ」
キョウくんのその声で一瞬にしてボルテージは最高潮。泣きながら笑いながら全身でHOPETOYSを感じた。鳥肌が立って、震えが止まらなくて、だけど一瞬も見逃したくなくて瞬きすら惜しい、そんな二時間だった。
最後のバラードのイントロが流れるとメンバーひとりひとりが挨拶を始めた。もう涙で前が見えなくて、だけどソウタくんを目に焼き付けたくて必死に前を見た。モニターを通した方が見やすいんだけど、それじゃテレビと変わらないから肉眼で目に焼き付けた。
双眼鏡を覗いている人が目に入る。私も次はあれを買って来ようと思う。
そして夢の終わり。楽しくて、まだ帰りたくなくて、だけど終わりは来ちゃう。
「また明日から仕事頑張る」
すずねぇがそう呟いた。
そうだ、働こう、私も働こう。頑張って働いてまたこの場所に戻ってくるんだ。今度は私がチケット取ってすずねぇと一緒に来たい。
そして暗転して、呆然と椅子に腰を下ろした。
だけどどこからか「アンコール、アンコール」という声が聞こえてきた。ひとりがそう叫ぶと連鎖するようにあちこちから統率のとれた声が聞こえてきた。
「ねぇ、これ言ったら出てきてくれるのかな?」
「そうかも、言おう!」
「うん!」
私もすずねぇも負けじと声を出した。もしかしたら戻ってきてくれるかもしれない、そう思って。
二分ほど経った後、客席のライトがうっすらとついた。それに会場内は大熱狂。さらに「アンコール」の声が上がる。
刹那、完全にライトが客席を照らした。眩しくて現実と夢がまざっているようなそんな気分になった。
するとメンバー全員が出てきた、私とすずねぇは静かに手を繋いだ。しだいにそれはぎゅっと強くなる。
「ねぇ、こっち来る」
暗くて気づかなかった場所に通路があり、客席のライトが照らされたことで道が見えた。メンバーはみんなぞろぞろとそこを通り歩いている。このままだと私たちの前を通る。
私とすずねぇの手は汗でぐっしょりと濡れていた。だけど離すわけにはいかなかった。倒れるわけにはいかないから。
そしてついに私の前にメンバーが通過した。さっきまでは客席のライトがついていなく、メンバーを照らすスポットライトだけが光を放っていたから手をかざし目の上に影を作り客席を見ていた。
だけど客席のライトがついたことで光の壁が取り除かれてお互いとても見やすくなっていた。
メンバーは笑顔でこちらに手を振る。
ふと、ソウタくんがこっちを向いて手を振った。
目が合った……気がした。
すると私の周り二十人くらいがみんな一斉に悲鳴をあげた。
ふっと笑みがこぼれた。みんな自分と目が合ったと思っていたんだ。
続いてキョウくんがこちらに向かい手を振った。私は一歩下がってすずねぇを前に出した。
キョウくんもなんとなくこちら側に手を振り、やっぱりここら辺一体が悲鳴に包まれた。
すずねぇは泣いていた。
ただずっと泣いていた。
ソウタくん、ありがとう。
HOPETOYS、ありがとう。
そしてなにより、すずねぇ、ありがとう。
私をこんな世界に連れてきてくれてありがとう。生きていてよかったって、これからも生きたいって思わせてくれてありがとう。
カウントダウンが終わり、一瞬の静寂、みんなの胸の鼓動が聞こえてきそう。
「行くぞーっ」
キョウくんのその声で一瞬にしてボルテージは最高潮。泣きながら笑いながら全身でHOPETOYSを感じた。鳥肌が立って、震えが止まらなくて、だけど一瞬も見逃したくなくて瞬きすら惜しい、そんな二時間だった。
最後のバラードのイントロが流れるとメンバーひとりひとりが挨拶を始めた。もう涙で前が見えなくて、だけどソウタくんを目に焼き付けたくて必死に前を見た。モニターを通した方が見やすいんだけど、それじゃテレビと変わらないから肉眼で目に焼き付けた。
双眼鏡を覗いている人が目に入る。私も次はあれを買って来ようと思う。
そして夢の終わり。楽しくて、まだ帰りたくなくて、だけど終わりは来ちゃう。
「また明日から仕事頑張る」
すずねぇがそう呟いた。
そうだ、働こう、私も働こう。頑張って働いてまたこの場所に戻ってくるんだ。今度は私がチケット取ってすずねぇと一緒に来たい。
そして暗転して、呆然と椅子に腰を下ろした。
だけどどこからか「アンコール、アンコール」という声が聞こえてきた。ひとりがそう叫ぶと連鎖するようにあちこちから統率のとれた声が聞こえてきた。
「ねぇ、これ言ったら出てきてくれるのかな?」
「そうかも、言おう!」
「うん!」
私もすずねぇも負けじと声を出した。もしかしたら戻ってきてくれるかもしれない、そう思って。
二分ほど経った後、客席のライトがうっすらとついた。それに会場内は大熱狂。さらに「アンコール」の声が上がる。
刹那、完全にライトが客席を照らした。眩しくて現実と夢がまざっているようなそんな気分になった。
するとメンバー全員が出てきた、私とすずねぇは静かに手を繋いだ。しだいにそれはぎゅっと強くなる。
「ねぇ、こっち来る」
暗くて気づかなかった場所に通路があり、客席のライトが照らされたことで道が見えた。メンバーはみんなぞろぞろとそこを通り歩いている。このままだと私たちの前を通る。
私とすずねぇの手は汗でぐっしょりと濡れていた。だけど離すわけにはいかなかった。倒れるわけにはいかないから。
そしてついに私の前にメンバーが通過した。さっきまでは客席のライトがついていなく、メンバーを照らすスポットライトだけが光を放っていたから手をかざし目の上に影を作り客席を見ていた。
だけど客席のライトがついたことで光の壁が取り除かれてお互いとても見やすくなっていた。
メンバーは笑顔でこちらに手を振る。
ふと、ソウタくんがこっちを向いて手を振った。
目が合った……気がした。
すると私の周り二十人くらいがみんな一斉に悲鳴をあげた。
ふっと笑みがこぼれた。みんな自分と目が合ったと思っていたんだ。
続いてキョウくんがこちらに向かい手を振った。私は一歩下がってすずねぇを前に出した。
キョウくんもなんとなくこちら側に手を振り、やっぱりここら辺一体が悲鳴に包まれた。
すずねぇは泣いていた。
ただずっと泣いていた。