なんだかんだあって……初日の公演を全身全霊で楽しみつくし、その後東京軍団と共に予約してあったビュッフェにて反省会と称しながらも推しの良いところを語り合う。もう推しでお腹いっぱいなんだけどね。

料理も美味しく感じる。地元でのライブ観戦もいいがやはり都会のライブも悪くはない。
あとオーラスの大阪公演のみ。
そこではまた東京軍団の一部も来て関西軍団、東北、北海道、沖縄、九州、四国、中国地方と全国のファン仲間が集まる……。
毎日のようにSNSでは文字や写真だけでワイワイしているのに実際に会うとなったらもうさらにどんちゃん騒ぎ。
それが本当にたまらなく好きである。
親戚が地元にしかいないし女きょうだいがいない私にとってはみんな私の姉、妹、親戚みたいな感じもする。

ってこんなこと言うとリアルの友達は少ないのでは? とか思われるけど咲良もいるし、中学、高校、短大の友達もいるし。

あ、そんな中幼稚園から幼馴染のあの子からメールが。
「ワゴン車の彼?」
と東京軍団の1人が割り込んでくるがだから違うヨォと言ってメールを見る。

『ライブどうだったー? 凛と蓮が寂しがってるよー』
幼馴染の玲子。彼女は20代前半、結婚ブーム第一波で結婚した幼馴染。年上の享くんと結婚してまだ幼い二人の息子と娘の母親だ。

電話の後ろでいつも通りの騒がしさ、私も子供たちが恋しい。
毎日のように何かと連絡とるか会うかで。小学生になった蓮が玲子のお腹の中にいる時から私は知っている。お風呂入れたりおむつを変えたりご飯を食べさせたり送り迎えもしたこともある。

玲子と亨くんの両親はそれぞれ遠いところにそれぞれの理由で引っ越ししたため手伝ってもらえる人がいない。
亨くんは不定休で夜勤も多い、玲子も午前中だけ仕事をしている。
だから玲子の幼馴染だった私は手伝ってたら自然とこの家族に馴染んじゃって。
誕生日とかお祝い事も楽しくってケーキも手作り、お祝いの風船やらなんやら、クリスマスにはサンタクロースになって。
旅行だって家族旅行でいいのに私までついて行く始末。なんかこの家族のとおい親戚よりも近くて濃い親戚にである。
玲子もだけど子供たちが我が子のように愛おしい。この子たちの成長を見守るのも私の役割でもあるのだ。

だから自分の子供いなくてもいいんじゃね? みたいな気持ちでもいる。だから結婚しなくてもいいのかと。

『お土産待ってるからね』
「うん、わかったー。蓮と凛には来週の旅行の準備を今度しようねって言っといてー」
『わかった、もうお菓子屋さん行くって決めてるらしいから……今から楽しみにしてるよ』
「私もだよーバイバイ」

本当に家族、って感じだ。って私にも両親と弟いるけども。

「彼氏だった?」
だから違うって。と苦笑いして流した。
もうこの苦笑いもまじでなんとかならないかな。




ホテルに戻ってベッドに仰向けになってフウ、とため息をつく。
交代でシャワーで入って脚をマッサージをしてむくみをとる。


咲良は明日の準備をしている。私もそろそろしなきゃーと鼻歌混じりで顔には美容パックつけていたら
「楽しそうだね、リア充」
と。
「何言ってるの、咲良だってさ」
「社畜が休みの日を楽しんでいるだけよ」
「自分で言う? 社畜って。社畜だからこうやってライブに行けるんじゃん」
咲良も私と同じ年齢で結婚もしていないし彼氏もいない。営業秘書でバリバリ働いている。
結婚もせず子供も彼氏もいなければいろんなことを自分に費やすことが出来る、それを唯一理解してくれるのが咲良だと思う。

「旅行もいいねー」
「今も旅行しているもんだけど」
「先月だけでも何回旅行言ってるのよ、本当にリミはリア充の極み」
「へへへー」
こうやって独身女子トークで盛り上がる、楽しいものである。

別に私だって結婚して子供は欲しいものである。でもそうしたらこうやって推しを追いかけることも友達と旅行行くことだなんて容易じゃないってわかっている。

同じような生活ができなくなってしまうんじゃないかって。それらができなかったら私の精神安定が崩れてしまう。

高校の友達に何人かも結婚して子供いるけど色んな話を聞くし、そもそも結婚したらなかなか時間が合わなくなって。聞くところによると旦那さんが仕事しているのにランチに行くのは何事だとか言われたり、家族との時間が大切だって言ったり、夜や土日は夫が子供を見てくれないとかだったり。
あとは嫁姑問題も多く愚痴で聞くんだけども……。
そんな話を聞いているうちに嫌にもなるわけで。

でもそんな子たちが
「結婚はいいよー早くしなよ」
「子供は早いうちに生みなよ、体力無くなるから」
だなんて言うから説得力がない。
玲子のところはざっくばらんだから自由なんだけどね。
(玲子のところはケンカはよくしているけどなんだかんだでなかむつまじいからそんな夫婦に憧れちゃってはいる。)

最近は子供がそれぞれ大きくなったから子供を連れて集まるようになって。そこでも私はイベントをやってワイワイするの。玲子の子供もだけどみんなの子供も可愛い。自分のように可愛い。

他人の子だから尚更可愛いし成長も早い。気づけば子供たちもどんどん大きくなって集まりも家族単位でできなくなってきた。

赤ちゃんだった子たちが大きくなっちゃって……その親として頑張っている友達とは段々話も合わなくなってきちゃった。私がこうやって推し活や旅行していることをSNSに載せると羨ましいとかいいねぇとか言ってくるけどそれすらも無くなってきた。

悲しいよね。

「うちらは一生リア充でいいよね」
と咲良はビール缶をあけた。私も開けた。