「それじゃ、『お手伝い』にあたっていくつかルールを決めさせてもらうよ!」
元気にそう言った花宮さんを見ていると、さっきの選択を後悔してしまいそうになる。
いったい僕はどうなってしまうんだ……。
「私が決めたこの三つのルールには必ず従ってもらいます!いい?」
「分かりました。もうなんでも言ってください」
「なんかやけくそになってない?安心して!なにも無茶なお願いを聞いてもらおうとしたりはしてないから」
「……例えば?」
「え〜、なんだろ?フルマラソンを一緒に走るよ!とかは言わないつもりだよ」
「それを聞いてちょっと安心しました。そんなことしたら僕はまたこのベッドで寝ることになるでしょうから」
「蒼唯君って意外とギャグセンスあるんだね!」
結構本気で言ったんだけどなぁ……。
「そうじゃなくて!『お手伝い』をしていく上での二人の間のルールだよ!」
彼女はそういうと左手の指を三本立てて、僕の方へ向けた。
「一つ目は私たちの関係は誰にも言わないこと」
なるほど。それは僕にとってもありがたい。
昨日彼女が言った通りなら、『お手伝い』は彼女がしたいことのお手伝いだ。
すると、彼女と連絡したり、一緒に行動することもあるだろう。
そんなことが周囲に広がったら周りの人達からなんて思われるか分からない。
「二つ目は全ての『お手伝い』が終わったらそのことをきれいさっぱり忘れること」
「え?なにか危ないことに巻き込もうとしてますか?」
「そんなことしないよ?!」
「じゃあ、なんでそんなルールを?」
「うーん……またいつか話すよ!」
あからさまに話を逸らす彼女の心を読めたら良かったのだが……案の定、何も聞こえないしいつか本人の口から聞けることを期待しよう。
ただ、今ので一気に不安度が増してしまったけど。
「そして三つ目のルール。これが一番大切!」
そう意気込む彼女を固唾を飲んで見守る。
そこまで言うなんて一体どんなルールを言われるのだろうか。
緊張感が張り詰めた病室でついに彼女が口を開いた。
「お互いに相手のことを好きにならないこと」
「……え?」
思わず間抜けな声がでた。
でも、確かに彼女ほどの人なら過去に恋愛面で苦労があったとしてもおかしくはない。
そう考えると納得はできる……のか?
「この三つのルールを蒼唯君は守ると約束できる?」
彼女はニコッと笑い僕に問いかけた。
「分かりました。約束しましょう」
元々、自分に彼女が欲しいなんて思ったこともない。
そもそも、僕は人が怖いんだから彼女がどうこうと話せるような奴ではないんだ。
花宮さんとの関係も他言する気はないし二つ目のルールも真意こそ分からないものの、よっぽどのことがない限りできないことは無いだろう。
どのルールも僕に支障が出るものでは無い。
「そっか。じゃあ退院後は楽しみだね」
「……そうですね」
「絶対そう思ってないでしょ!心は読めないけど今の蒼唯君の顔は見たらすぐ分かるんだからね!?」
そんなに顔に出てたかな?
「まぁ、いいや。これから連絡も取る事になるだろうし、連絡先交換してもいい?」
「あ、分かりました」
ベッドの隣にある棚からスマホを取った。
それから、僕らはメッセージアプリでお互いのアカウントを登録。
僕らの最初のメッセージは花宮さんからで三毛猫のイラストが「よろしく!」と言ってるスタンプだった。
「じゃあこれからよろしくね。また明日!」
「……行ってらっしゃい」
時刻も十二時を回り、今日もまた彼女は学校に登校するために病室を出ていった……はずだったのだが、彼女は閉まったドアをもう一度開け、僕の方に顔だけを覗かせた。
不思議に思ってる僕にイタズラな笑みを浮かべて彼女は言った。
「あと、私たち同級生だし敬語禁止で!あと、私のことは紫音って呼んで!」
「えっ?ちょっと待っ――」
「私もこれから蒼唯って呼び捨てにするから!それじゃ!」
僕が言い切る前に花宮さん――紫音はピシャリとスライド式の白いドアを閉めてしまった。
女子を下の名前で呼ぶなんて小学生の頃以来だからなんだが気恥しい。
なんて思っているとふと気がつく。
また明日って、明日も会うつもりなのか?!せっかくアカウント交換したんだから、メールで済ませたら駄目なのかな?
というか、会うってまさか学校内でじゃないよね?
なんて考えが巡り、やっぱり彼女と居ると頭を抱えてしまう。
病室は昨日と同じで僕の無言の悲鳴と、彼女の金木犀の匂いで満たされていた。
元気にそう言った花宮さんを見ていると、さっきの選択を後悔してしまいそうになる。
いったい僕はどうなってしまうんだ……。
「私が決めたこの三つのルールには必ず従ってもらいます!いい?」
「分かりました。もうなんでも言ってください」
「なんかやけくそになってない?安心して!なにも無茶なお願いを聞いてもらおうとしたりはしてないから」
「……例えば?」
「え〜、なんだろ?フルマラソンを一緒に走るよ!とかは言わないつもりだよ」
「それを聞いてちょっと安心しました。そんなことしたら僕はまたこのベッドで寝ることになるでしょうから」
「蒼唯君って意外とギャグセンスあるんだね!」
結構本気で言ったんだけどなぁ……。
「そうじゃなくて!『お手伝い』をしていく上での二人の間のルールだよ!」
彼女はそういうと左手の指を三本立てて、僕の方へ向けた。
「一つ目は私たちの関係は誰にも言わないこと」
なるほど。それは僕にとってもありがたい。
昨日彼女が言った通りなら、『お手伝い』は彼女がしたいことのお手伝いだ。
すると、彼女と連絡したり、一緒に行動することもあるだろう。
そんなことが周囲に広がったら周りの人達からなんて思われるか分からない。
「二つ目は全ての『お手伝い』が終わったらそのことをきれいさっぱり忘れること」
「え?なにか危ないことに巻き込もうとしてますか?」
「そんなことしないよ?!」
「じゃあ、なんでそんなルールを?」
「うーん……またいつか話すよ!」
あからさまに話を逸らす彼女の心を読めたら良かったのだが……案の定、何も聞こえないしいつか本人の口から聞けることを期待しよう。
ただ、今ので一気に不安度が増してしまったけど。
「そして三つ目のルール。これが一番大切!」
そう意気込む彼女を固唾を飲んで見守る。
そこまで言うなんて一体どんなルールを言われるのだろうか。
緊張感が張り詰めた病室でついに彼女が口を開いた。
「お互いに相手のことを好きにならないこと」
「……え?」
思わず間抜けな声がでた。
でも、確かに彼女ほどの人なら過去に恋愛面で苦労があったとしてもおかしくはない。
そう考えると納得はできる……のか?
「この三つのルールを蒼唯君は守ると約束できる?」
彼女はニコッと笑い僕に問いかけた。
「分かりました。約束しましょう」
元々、自分に彼女が欲しいなんて思ったこともない。
そもそも、僕は人が怖いんだから彼女がどうこうと話せるような奴ではないんだ。
花宮さんとの関係も他言する気はないし二つ目のルールも真意こそ分からないものの、よっぽどのことがない限りできないことは無いだろう。
どのルールも僕に支障が出るものでは無い。
「そっか。じゃあ退院後は楽しみだね」
「……そうですね」
「絶対そう思ってないでしょ!心は読めないけど今の蒼唯君の顔は見たらすぐ分かるんだからね!?」
そんなに顔に出てたかな?
「まぁ、いいや。これから連絡も取る事になるだろうし、連絡先交換してもいい?」
「あ、分かりました」
ベッドの隣にある棚からスマホを取った。
それから、僕らはメッセージアプリでお互いのアカウントを登録。
僕らの最初のメッセージは花宮さんからで三毛猫のイラストが「よろしく!」と言ってるスタンプだった。
「じゃあこれからよろしくね。また明日!」
「……行ってらっしゃい」
時刻も十二時を回り、今日もまた彼女は学校に登校するために病室を出ていった……はずだったのだが、彼女は閉まったドアをもう一度開け、僕の方に顔だけを覗かせた。
不思議に思ってる僕にイタズラな笑みを浮かべて彼女は言った。
「あと、私たち同級生だし敬語禁止で!あと、私のことは紫音って呼んで!」
「えっ?ちょっと待っ――」
「私もこれから蒼唯って呼び捨てにするから!それじゃ!」
僕が言い切る前に花宮さん――紫音はピシャリとスライド式の白いドアを閉めてしまった。
女子を下の名前で呼ぶなんて小学生の頃以来だからなんだが気恥しい。
なんて思っているとふと気がつく。
また明日って、明日も会うつもりなのか?!せっかくアカウント交換したんだから、メールで済ませたら駄目なのかな?
というか、会うってまさか学校内でじゃないよね?
なんて考えが巡り、やっぱり彼女と居ると頭を抱えてしまう。
病室は昨日と同じで僕の無言の悲鳴と、彼女の金木犀の匂いで満たされていた。