「ずっと前から好きだった!俺と付き合って欲しい」
朝七時三十二分の教室。始業時間の一時間以上も前。
空き教室に乃々を呼び出して俺はついに告白した。
「うそ……なんで?いつから?」
「中二の時、乃々が俺を助けてくれた時から俺は乃々のその心の強さと優しさに惚れたんだ」
最初は戸惑っていた乃々も時間を経て落ち着きを取り戻してくれて、ついに返事をくれた。
「大輝の思いは嬉しい。でもごめん」
乃々は俺の前できっぱりと断った。
もちろん悲しかった。
蒼唯に背中を押され、紫音にも相手が乃々だとは言ってはないけど何度も恋愛相談に乗ってもらったのに……。
「大輝のことは昔からずっと大事に思ってる。気の合う幼なじみなんて中々巡り会えるものじゃないし。でも大輝は私にとって昔から、きっとこれからも親友のままだと思う」
「……俺をこれからも親友で居させてくれるのか?」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!当たり前でしょ!今までもこれからもずっと親友よ」
捉え方によれば「これから先も付き合うつもりは無い」と聞こえるかもしれないけど、乃々がそんな意味で言ったことでは無いのは顔を見たら分かった。
いつもの笑顔。
優しくて、豪快な。昔と変わらない笑い方。
「だから、そんなにめそめそしないで」
今でこそ俺の方が身体が大きくなっちまったけど、俺がまだ乃々と身長が変わらなかった頃はいつも乃々は俺を慰めてくれてたっけ。
乃々が俺に近寄って頬の涙を拭ってくれた時に初めて俺が泣いてることに気づいた。
蒼唯にもし振られたらどうするかと聞かれて、偉そうに「今までと変わらない」なんて言っておきながらかっこ悪い。
振られた後の正解なら頭ではしっかり分かってるじゃないか。
乃々は俺の泣き顔なんて見たくない。
俺はいつも通り、乃々に誇れる前向きで明るいやつでいないと。
そうしていることこそが、あの時助けてくれた乃々への感謝を示す俺なりのやり方なんだから。
「しかし、大輝が私のこと実は好きだったなんてね〜。全然気づかなかった」
「乃々!掘り下げてくれるな」
「いいじゃん!いいじゃん!」
「じゃあ、俺も聞くけど。乃々には今好きな人がいるのか?」
「……うん。居るよ」
乃々はさっきと一変、頬を赤らめてそっぽを向いて答えた。
「そっか、頑張れよ」
「……どうだろ?難しい恋だからさ」
「そりゃ、お互い様だろ」
「はは、確かに」
そう無邪気に笑う乃々を見て心の底から可愛いと思えてしまうんだからきっと俺はどうしようもなく乃々のことが好きなんだろうなと思った。
ん?待てよ?心の声が読めるってことは、さては蒼唯。俺が相談する前から俺の好きな人分かってたな?!
俺に話を合わせててくれたのか……。
後で蒼唯に聞いてみよう。
乃々とひとしきり笑い、俺たちの間には告白が失敗に終わった暗い雰囲気なんて一つも無かった。
「じゃあ、これからは俺は周りの人達の恋を応援していかないとな」
蒼唯や紫音に背中を押してもらった。
今度は俺が誰かの背中を押してあげる番だ。
俺にそんなことができるか分からないけど、人が苦手と言っていた蒼唯がしてくれたんだ。
俺も頑張らないとな。
「周りの人達って……私以外に誰かいるの?」
「え?乃々以外にか。そうだな……」
少し考える。
俺の周りで恋をしてそうな人か……。
「……蒼唯とか紫音かな?」
すると、乃々の体はピクっと反応した。
「へぇ、蒼唯と紫音って恋してるんだ。意外かも」
乃々は興味津々とばかり前のめりになって聞いてくる。
「で、二人は誰が好きなの?」
「いや、確信が持ててる訳じゃないんだ!もしかしたらの話」
「それでいいから教えてよ!大丈夫!私口硬いの知ってるでしょ?」
「知ってるけど……」
蒼唯には口の硬さは関係ないからな……。
心が読めるから知ってる時点で蒼唯には伝わるわけで……。
そんな俺の気も知らないで乃々はまだかまだかと目を輝かせて待っている。
ごめん二人とも!俺はこの顔には敵わない。
「蒼唯がつけてるブレスレットって見た事あるか?」
「そんなのつけてたっけ?」
「普段左手の、服で見えないようなとこにつけてるんだよ」
「そうなんだ……てか、なんでそんなに知ってるの?」
「昨日蒼唯の家に行った時にちょっと色々あって……」
さすがに乃々本人に、乃々についての恋愛相談をしていたと言う勇気は俺にはなかった。
「ずるい!なんで私も呼ばないのよ!」
すると、乃々は俺の脇腹をつつきだし、「男子会だったから!二人だけだから!」と言い訳をすると乃々はそれなら仕方ないと猛攻は止まった。
「で、ブレスレットがどうかしたの?」
「今日の朝、電車でそのブレスレットと同じのをつけてる大学生二人と高校生を見つけたんだ」
「結構同じのつけてる人多いんだね。……てか、あんまり話が見えてこないんだけど?」
「すまんな、話すのが上手くなくてな。じゃあ、結論から言うよ」
そう言うと乃々は固唾を飲んで待った。
「蒼唯のつけれたブレスレットはペアルックのものだったんだ」
「え?!ペアルック!」
乃々は分かりやすく興奮してた。
ワナワナと震えて全身でそれを表現していた。
「電車に居た二人の大学生は肩を寄せ合ってたカップルで二人がそれをつけてたから気づけたんだ」
「なるほど……ってことはその電車にいたもう一人の高校生が蒼唯とペアルックを共有してる人ってこと?!」
「恐らくな」
「えー?!誰?同じ学校?」
乃々の興奮は今が最高潮のようで興味津々の様子。
今にも軽やかに飛び跳ねそうだ。
「で、そのもう片方のブレスレットをしていた高校生ってのは紫音だったんだ!」
乃々がおかしくなったのはそう言った時からだ。
そんなことにも気づかず俺は話を進めた。
次第に紫音から笑顔が無くなっていって、俺を置いて空き教室を出て、教室へ戻って行った。
朝七時三十二分の教室。始業時間の一時間以上も前。
空き教室に乃々を呼び出して俺はついに告白した。
「うそ……なんで?いつから?」
「中二の時、乃々が俺を助けてくれた時から俺は乃々のその心の強さと優しさに惚れたんだ」
最初は戸惑っていた乃々も時間を経て落ち着きを取り戻してくれて、ついに返事をくれた。
「大輝の思いは嬉しい。でもごめん」
乃々は俺の前できっぱりと断った。
もちろん悲しかった。
蒼唯に背中を押され、紫音にも相手が乃々だとは言ってはないけど何度も恋愛相談に乗ってもらったのに……。
「大輝のことは昔からずっと大事に思ってる。気の合う幼なじみなんて中々巡り会えるものじゃないし。でも大輝は私にとって昔から、きっとこれからも親友のままだと思う」
「……俺をこれからも親友で居させてくれるのか?」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!当たり前でしょ!今までもこれからもずっと親友よ」
捉え方によれば「これから先も付き合うつもりは無い」と聞こえるかもしれないけど、乃々がそんな意味で言ったことでは無いのは顔を見たら分かった。
いつもの笑顔。
優しくて、豪快な。昔と変わらない笑い方。
「だから、そんなにめそめそしないで」
今でこそ俺の方が身体が大きくなっちまったけど、俺がまだ乃々と身長が変わらなかった頃はいつも乃々は俺を慰めてくれてたっけ。
乃々が俺に近寄って頬の涙を拭ってくれた時に初めて俺が泣いてることに気づいた。
蒼唯にもし振られたらどうするかと聞かれて、偉そうに「今までと変わらない」なんて言っておきながらかっこ悪い。
振られた後の正解なら頭ではしっかり分かってるじゃないか。
乃々は俺の泣き顔なんて見たくない。
俺はいつも通り、乃々に誇れる前向きで明るいやつでいないと。
そうしていることこそが、あの時助けてくれた乃々への感謝を示す俺なりのやり方なんだから。
「しかし、大輝が私のこと実は好きだったなんてね〜。全然気づかなかった」
「乃々!掘り下げてくれるな」
「いいじゃん!いいじゃん!」
「じゃあ、俺も聞くけど。乃々には今好きな人がいるのか?」
「……うん。居るよ」
乃々はさっきと一変、頬を赤らめてそっぽを向いて答えた。
「そっか、頑張れよ」
「……どうだろ?難しい恋だからさ」
「そりゃ、お互い様だろ」
「はは、確かに」
そう無邪気に笑う乃々を見て心の底から可愛いと思えてしまうんだからきっと俺はどうしようもなく乃々のことが好きなんだろうなと思った。
ん?待てよ?心の声が読めるってことは、さては蒼唯。俺が相談する前から俺の好きな人分かってたな?!
俺に話を合わせててくれたのか……。
後で蒼唯に聞いてみよう。
乃々とひとしきり笑い、俺たちの間には告白が失敗に終わった暗い雰囲気なんて一つも無かった。
「じゃあ、これからは俺は周りの人達の恋を応援していかないとな」
蒼唯や紫音に背中を押してもらった。
今度は俺が誰かの背中を押してあげる番だ。
俺にそんなことができるか分からないけど、人が苦手と言っていた蒼唯がしてくれたんだ。
俺も頑張らないとな。
「周りの人達って……私以外に誰かいるの?」
「え?乃々以外にか。そうだな……」
少し考える。
俺の周りで恋をしてそうな人か……。
「……蒼唯とか紫音かな?」
すると、乃々の体はピクっと反応した。
「へぇ、蒼唯と紫音って恋してるんだ。意外かも」
乃々は興味津々とばかり前のめりになって聞いてくる。
「で、二人は誰が好きなの?」
「いや、確信が持ててる訳じゃないんだ!もしかしたらの話」
「それでいいから教えてよ!大丈夫!私口硬いの知ってるでしょ?」
「知ってるけど……」
蒼唯には口の硬さは関係ないからな……。
心が読めるから知ってる時点で蒼唯には伝わるわけで……。
そんな俺の気も知らないで乃々はまだかまだかと目を輝かせて待っている。
ごめん二人とも!俺はこの顔には敵わない。
「蒼唯がつけてるブレスレットって見た事あるか?」
「そんなのつけてたっけ?」
「普段左手の、服で見えないようなとこにつけてるんだよ」
「そうなんだ……てか、なんでそんなに知ってるの?」
「昨日蒼唯の家に行った時にちょっと色々あって……」
さすがに乃々本人に、乃々についての恋愛相談をしていたと言う勇気は俺にはなかった。
「ずるい!なんで私も呼ばないのよ!」
すると、乃々は俺の脇腹をつつきだし、「男子会だったから!二人だけだから!」と言い訳をすると乃々はそれなら仕方ないと猛攻は止まった。
「で、ブレスレットがどうかしたの?」
「今日の朝、電車でそのブレスレットと同じのをつけてる大学生二人と高校生を見つけたんだ」
「結構同じのつけてる人多いんだね。……てか、あんまり話が見えてこないんだけど?」
「すまんな、話すのが上手くなくてな。じゃあ、結論から言うよ」
そう言うと乃々は固唾を飲んで待った。
「蒼唯のつけれたブレスレットはペアルックのものだったんだ」
「え?!ペアルック!」
乃々は分かりやすく興奮してた。
ワナワナと震えて全身でそれを表現していた。
「電車に居た二人の大学生は肩を寄せ合ってたカップルで二人がそれをつけてたから気づけたんだ」
「なるほど……ってことはその電車にいたもう一人の高校生が蒼唯とペアルックを共有してる人ってこと?!」
「恐らくな」
「えー?!誰?同じ学校?」
乃々の興奮は今が最高潮のようで興味津々の様子。
今にも軽やかに飛び跳ねそうだ。
「で、そのもう片方のブレスレットをしていた高校生ってのは紫音だったんだ!」
乃々がおかしくなったのはそう言った時からだ。
そんなことにも気づかず俺は話を進めた。
次第に紫音から笑顔が無くなっていって、俺を置いて空き教室を出て、教室へ戻って行った。