あれから次の日。
 僕の学校での日常にも紫音のせいで大きな変化が起きた。
 「――おはよう蒼唯!」
 「お、おはよう大輝くん……」
 「だから、大輝でいいって」
 大輝は登校したばかりの僕目掛けてやってきて背中をバシバシと叩いた。
 これが体育会系のノリか……僕はこれから本当にやっていけるだろうか?
 『お手伝い』を終わらすためには大輝と乃々さんの二人の恋を成就させなければいけない。
 そのために僕は二人と早く仲良くならなければいけないのだが……小学校高学年の頃からまともに人と話してこなかった僕に今更そんなことが本当にできるだろうか?
 「あ、蒼唯じゃん。おはよ」
 「ひっ!……佐倉さん、おはよう」
 「さすがにそんなに驚かれたら私も傷つくんだけど……」
 「乃々が後ろから話しかけるからだろ?」
 「でもそんな驚く?」
 「ご、ごめん、ジュース買ってくるから許して欲しい……」
 「それじゃあ、私が最低なやつみたいになるでしょ!」
 「乃々、お前そんな風に見られてたのか」
 豪快に笑う大輝の頭を容赦なく引っぱたく佐倉さんを目の前に完全に置いてけぼりを食らったように感じる。
 (私、そんなにガラ悪そうに見えたかな……?)
 口では大輝を罵ってる佐倉さんだけど佐倉さんも気にしてしまったみたいで本当に申し訳なくなる。
 「あれ、三人とももう来てたの?」
 「紫音だー!おはよ!聞いてよ大輝と蒼唯がさぁ!」
 「えぇ?!俺ら?!」
 「おはよう乃々ちゃん!おーよしよし。何があったか話してごらん」
 こちらに視線を向ける紫音に助けを送りたいけど……。
 あっ!ととある閃きをして僕は昨日まではなかった左手の黒のブレスレットに手を伸ばす。
 本来の使用用途とは違うけど伝わってくれ!そして僕を助けて!
 紫音は振動を右手のブレスレットから受け取り全てを察したかのようにこちらを見たままニヤリと笑った。
 「とりあえず、蒼唯と大輝が悪いってことね!」
 「「違うって!」」
 本当に僕はこの三人とやっていけるのだろうか?
 胃が痛くなりそうだ。