「聖亜、話してくれてありがとう」

 僕はそっと聖亜の背中に触れる。

「聖亜の気持ちはすごくうれしいよ。僕だって聖亜のこと、好きだから」
「えっ!」

 顔を上げた聖亜に、僕は言う。

「幼なじみとしてだけどね」

 聖亜がむっと顔をしかめる。僕はにこっと笑って続ける。

「でもこれから変わっていくかもしれない。先のことはまだわからない。だからまだ死なないでよ」
「変わらないかもしれねーだろ。そしたら俺は生き損だ」
「そんなこと言わないの!」

 僕は聖亜の背中をぽんぽんっと叩く。

「羽流と『長生きする』って約束したんでしょ? だから生きるしかないんだよ。聖亜も……僕も」

 僕たちの足元に、子どものボールが転がってきた。
 それを拾うと、僕は聖亜に言った。

「聖亜! 一緒にバスケしようよ!」

 むすっとしたままの聖亜を残し、僕は子どもたちのもとへ駆け寄った。

「僕も仲間に入れてくれる?」

 一瞬きょとんっとした子どもたちが、すぐに笑って歓迎してくれた。

「いいよー!」
「お兄ちゃんも一緒にやろう!」

 僕は子どもたちに借りたボールを地面に弾ませる。
 それから聖亜の姿を頭の中に思い浮かべながら、ゴールに向かってぎこちなくボールを投げる。
 しかしボールは大きくそれて、ボードの角に当たって地面に転がった。

「ドンマイ! お兄ちゃん!」
「次、僕がやるねー!」
「その次は俺な!」

 子どもたちのはしゃぎ声が、春風の吹く公園に響き渡る。
 僕は笑いながら、ちらっとベンチのほうを見る。
 聖亜はあいかわらず、むすっとしていたけれど、そこをどこうとはしなかった。

「よしっ、僕ももう一度やるぞ!」

 子どもたちと順番に、ゴールに向かってシュートする。

「あー、惜しい!」
「ざんねーん!」
「今度は僕ねー」

 だけどシュートはちっとも決まらない。
 やっぱり僕の運動神経はぶっ壊れているようだ。

「あー、難しいね。バスケって」

 十回目のシュートを失敗した僕は、苦笑いしながらそう言った。

「難しくなんかねーだろ。バスケなんて」

 ふと後ろから声が聞こえたと思ったら、いきなり持っていたボールを奪われる。