おそるおそる、その顔を見る。
 風にさらさらと揺れる、色素が抜けたような明るい髪。
 透き通るような、綺麗な肌。
 背は僕と同じくらいであまり高くはないが、細身ですらっとした体型。
 そしてテレビに出ているアイドルのような、ちょっと童顔の整った顔立ち。
 女子からは間違いなく「かわいい」と騒がれそうな……。
 その生徒が僕と同じように、驚いた顔のまま静止している。

 僕はハッと我に返った。
 いや、もう決めたんだ。まさかここに人がいるとは思わなかったけど。
 でも、もう決めたんだ。いまから、死んでやるって。

 僕は足をぐっと踏み出した。
 一旦立ち止まってしまったせいで、さっきよりずっと重くなっている。
 でもここで躊躇したらだめだ。
 このまま勢いよくいかないと――また怖くなってしまう。

 何度も死のうと思った。
 カッターで手首を切ろうと思ったり、風邪薬を死ぬほど飲もうと思ったり……。
 でも一度も成功したことはなかった。
 ビビッてしまったからだ。
 だけどもう、こんな生活終わりにしたい。
 どうせ死ぬなら、あいつらに僕が死ぬところを見せつけてやりたい。
 そしたら昨日、ふとひらめいたんだ。
 校舎の屋上から、飛び降りればいいんじゃないかって。
 遺書を置き、これ見よがしに屋上から、みんながいるグラウンドへ。
 きっと大騒ぎになるだろう。さすがに聖亜たちも青ざめるはず。
 ざまあみろ。お前らが「死ね」なんて言ったからだ。
 お前らが僕を殺したんだ。お前らは殺人者だ。一生後悔して生きればいい。

 右手でフェンスをつかむ。カシャンッという音が響く。
 震えているその手を見ないようにしながら、左手でもフェンスをつかむ。
 そしてさらに足をかけようとしたら、僕の制服を後ろからつかまれた。