翌日の放課後は体育館に向かうため、渡り廊下をふたりで歩いた。
 グラウンドでは野球部とサッカー部が練習をしていて、校舎からは吹奏楽部の楽器の音色と合唱部の歌声が流れてくる。
 僕はちらっと隣にいるハルを見た。
 運動部にも文化部にも、ハルは興味がないようだった。
 僕と同じように、帰宅部だったのかもしれない。
 そもそも学校に行っていなかった可能性もあるみたいだし。
 すると前から見慣れた生徒の姿が見えて、僕は思わず足を止める。

「聖亜……」

 ポケットに手を突っ込んで、外を眺めながら歩いていた聖亜も、僕に気づいて足を止めた。
 僕は気まずくなり、足元を見下ろす。
 すると聖亜の声が、耳に響いた。

「ハルは……」
「え?」

 僕は驚いて顔を上げる。

「いまそこにいるのか?」

 とっさに隣を見てしまう。けれどハルは首を横に振る。

「いないって言ってください」
「え……」
「ボク、あの人嫌いなんで」

 ハルがすたすたと渡り廊下を歩いていく。
 聖亜の横を通り過ぎたけど、聖亜は気づいていない。

「い、いないよ」

 その背中を見送りながら言うと、聖亜が怒った顔で近づいてきた。