「ただいまぁ……」
「おかえりー! 柚希!」

 家に帰ると、いつもよりご機嫌な顔で母さんが出てきた。
 キッチンからは、夕飯のいい匂いが漂ってくる。

「聖亜くんが来てるわよ!」
「へ?」
「久しぶりねー、聖亜くんが遊びに来るなんて。あ、柚希の部屋で待っててもらってるから、これ持ってって!」

 母さんが僕に無理やりお盆を持たせる。
 ジュースが入ったコップがふたつと、お皿に山盛りになっているポテトチップス。

「おかわりあるから、また取りにきてね。あ、もし夕飯食べていくなら、用意するから」

 母さんはにこにこしながらそう言うと、キッチンに戻っていった。

「……嘘だろ」

 なんで聖亜がうちに?
 僕はさっきの騒ぎを思い出しながら、おそるおそる階段を上る。
 ジュースをこぼさないよう慎重にドアを開けたら、むすっとした顔の聖亜が胡坐をかいていた。