「い、いつからここに……」
「お前を待ってた」
「え……」
「ハルってやつ、どこにいるんだよ!」

 僕は肩をぶるっと震わせる。
 聖亜は鋭い視線で、僕をにらみつけている。

 ハルのこと……確かめにきたのか?

「い、いまはいないよ」

 おそるおそる答えると、聖亜が「はあ?」と顔を歪ませた。

「いまはいない?」
「そうだよ、いまはいないんだよ」
「ふざけんな! そんなやつ、いつだっていねーだろ! 幽霊とかふざけたこと言ってんじゃねー!」

 聖亜がこぶしを振り上げ、左手で僕の胸倉をつかんだ。
 手に持っていたリュックが足元に落ち、僕はぎゅっと目を閉じる。
 殴られる、殴られる、殴られる……。
 あれ?
 覚悟したのに、なんの衝撃もこない。

 おそるおそる目を開くと、聖亜の青ざめた顔が見えた。
 その後ろから、ハルが聖亜の首筋にカッターの刃を突きつけている。
 僕はとっさにポケットに手を突っ込んだ。
 だけどいつも入れていたはずの物がなくなっている。