放課後、屋上へ行こうとしたら、担任教師に呼び止められた。

「柚希。進路希望調査書。出してないのはお前と……聖亜だけだぞ?」
「え……」

 立ち止まった僕を、担任があきれたような顔で見る。
 そしてファイルの中から一枚の用紙を取り出し、僕に渡した。

「ほら、これ。もう一度渡しておくから、今週中に提出するように」
「あ、はい」

 去っていく担任に小さく頭を下げてから、渡された用紙を見下ろす。

「進路か……」

 そんなもの、考えたことなかった。
 だって毎日死ぬことしか、考えてなかったから。
 僕は用紙をリュックの中に突っ込むと、それを抱えて階段を駆け上った。

「ハル! ごめん、遅くなって!」

 今日は朝から天気が良くない。
 薄暗い校舎から一歩出ると、どんよりと曇った空が視界に広がる。
 いままでどんな天気の日も、放課後ここに来ればハルに会えた。
 だけどそこにハルの姿がない。

「ハル……?」

 屋上を見まわしたあと、ふと自分が開けたドアのほうを振り向く。

「ひっ……」

 思わず声を上げてしまった。屋上の壁に寄りかかり、ふてくされた顔をした聖亜がいたからだ。