翌日も僕はずっと、ハルのことを考えていた。
 黒板の前でしゃべっている数学教師の声など、聞こえないほどに。
 シャーペンを握り締め、開いたノートに文字を書きこむ。

『ハルの死んだ理由』

 その文字を、ぐるっと丸く囲む。それからその下に、さらに文字を並べる。

『どこで死んだ?』
『なんで死んだ?』
『どうして屋上にいる?』

 僕は少し考えて矢印を引いてから、文字を書き足す。

『学校が好きだから』

 昨日思いついたこの答えは、やっぱりしっくりくる。
 ハルは自分でイケメンと言っているくらいだ。
 きっと学校が楽しかったに違いない。
 だったらやっぱり、『別の場所で死んだけどこの学校に戻ってきた』って案は、けっこうアリかもしれない。

「へぇー、ちゃんと考えてくれてるんですね?」

 その声にハッと顔を上げる。
 僕の机の上に、ハルが座っている。にこにこ笑いながら。

「ハ……」

 言いかけて、慌てて口を両手で押さえる。
 危ない、危ない。
 ハルはみんなには見えないんだから。

 僕はシャーペンを持ち直し、ノートに殴り書きをした。