「ごめんなさい。ボクがついていてあげればよかったんですけど」
「いや、ハルのせいじゃないし」

 そう、ハルのせいじゃない。

「僕がもっと強ければよかったんだ」

 ポケットの中に手を突っ込む。
 これは今日も、使うことができなかった。
 僕はハルが手にしている地縛霊の本を見ながら、ぼそっと口を開く。

「あのさ……」
「はい?」
「幽霊が人間を殺すことって……できるの?」

 ハルはきょとんとした顔で僕を見たあと、にこっと笑った。

「ユズはいじめっ子を殺したいんですね?」
「い、いや、できるかどうか聞いただけ」

 慌ててそう言ったけど、実はずっと考えていた。
 自分でできないのなら、幽霊にやってもらうしかないって。
 するとハルは「うーん」と首をひねりながらつぶやいた。

「どうでしょう……殺したことないからわかんないんですけど」
「でもよくホラー漫画とかで、幽霊が人を呪い殺すとかあるよね?」
「それはその幽霊が、その人間を殺したいほど憎んでいるからです。ボクはそこまで憎んでる人はいないっていうか……」

 そうか。ハルが殺したいほど聖亜を憎まなければ、呪い殺すなんて無理かもな。