そのときドアのほうから、カチャンという音がした。
 僕はハッと後ろを振り向くと、ドアに駆け寄る。

「やられた!」

 ガチャガチャとドアを開けようとするが、開かない。

「どうしたんですか?」
「中から鍵かけられた。きっとクラスのやつらだ」
「ひどいですね。幽霊が怖いからって、裏からこそこそと」

 ため息をつくハルに、すがりつく。

「どうしよう、ハル。前もやられたことがあるんだ。そのときはスマホも家に忘れてて……誰にも見つけてもらえないまま、翌朝までここに締め出されてた」
「ひどい」

 うつむいた僕の頭に、黒歴史が蘇る。

「そういえば小学生のころも、学年全員で校内かくれんぼをするイベントがあって、僕は体育館倉庫に隠れていたんだけど……」

 たしか鬼は、担任の先生だった。

「僕だけ見つけてもらえないまま……用務員さんに鍵かけられちゃったんだよね」
「えっ、それ、ひどすぎます!」

 顔をしかめるハルの前で、僕はあきらめたように笑う。

「僕って存在感薄いから。クラスメイトはもちろん、先生からも忘れられちゃったんだ。ひとりぼっちで、外がどんどん暗くなってきて、このまま夜になっちゃったらどうしようって、すごく怖かったの覚えてる」
「それで? 見つけてもらえたんですか?」
「え?」
「まさか朝までいたわけじゃないでしょ? 小学生が」
「あ……」

 そうだあのとき、僕を見つけてくれたのは――。

「聖亜……」
「聖亜?」
「いや、なんでもない」

 あのとき僕を見つけてくれたのは、聖亜だった。
 学校中を捜しまわって、僕が閉じ込められているのに気づいて、先生を呼んできてくれたんだ。
 胸がぎゅっと痛くなって、それを振り払うようにぶるっと首を振る。
 そしてポケットからスマホを取り出した。