「ハル!」

 放課後、屋上に行くと、ハルがフェンスの向こうを黙って見ていた。
 なんだか寂しそうな表情で。
 姿は普通の男子高校生なのに、ハルは幽霊。もう生きてはいない者。
 なにかの原因で、死んでしまったのだ。
 僕は胸がきゅっと痛くなるのを隠すように、明るい声をかける。

「ハル、見て! これ、借りてきたよ!」

 振り向いたハルの前に、図書館で借りてきた何冊もの本を見せる。
 ハルはちょっと顔をしかめて、それを手に取る。

「なんですか? これ」
「まずは幽霊のことを、基本から調べてみようと思って。借りてきた」
「『幽霊の謎』『おばけ図鑑』『地縛霊の秘密』なんなんですか、これは!」
「だって僕、幽霊に会ったのなんてはじめてだし。もっとハルのことを知りたいと思って」

 ハルは本の表紙に書かれてある、おどろおどろしい幽霊のイラストを見て、うんざりした顔をする。

「ボク……こんな姿じゃないですよね?」
「あ、うん」
「だったらこんなの借りてこないでください! ボクはこんな化け物じゃない!」

 そう言うと、ハルは後ろを向いてしょげてしまった。
 まずい。やってしまった。
 僕は慌ててハルの背中に声をかける。

「ごめん! ハルを傷つけるつもりはなかったんだ。ただ僕は、早くハルの役に立ちたくて……ごめん」

 しばらく後ろを向いたまま黙り込んでいたハルが、ぷっと噴き出すように笑った。