第一回《トキの迷宮》世界大会における出場者の総数は、優に十万を超える。これは数多のTCGがプレイヤーを奪い奪われ凌ぎを削る中、《トキの迷宮》が絶大なる支持を集め、頭一つ飛び抜けた存在であることを示していると言えるだろう。
 その世界的に有名なTCG《トキの迷宮》の世界大会において、初代チャンピオンの栄冠に輝いた若干十四歳の少年は、創始者から二つの贈り物を受け取った。
 一つは、赤と黒に染まった古めかしい指輪。
 そしてもう一つは、《時間の迷宮》という名のカードが一枚。
 世界大会の熱気も冷めやらぬ中、裏で創始者とのエキシビジョンが行われたことを知る者は当人達を除いて皆無だ。しかしそれも全ては計算の内であり、赤と黒に染まる指輪を嵌めた少年は、《時間の迷宮》を山札から引き当て、手札へと加えた。

 ――それが、全ての始まり。

 十四歳の少年が得た二つの贈り物は、この世界には存在してはならない場違いな工芸品。
 それらが生み出された別次元の世界の名を、創始者は紡ぎ出す。

 ――《迷宮の王国》――

 そこは、TCGが支配する、地球とは異なるもう一つの世界――…