見間違いか。
 それとも今までが勘違いか。

 演説する姿は、レミーゼ様に瓜二つだ。

 本当は、何も起きていないのではないか。
 地下室のアレは、あのときの奴隷だったのではないか。

 ……そう、思いたい。
 思わずにはいられない。

 でも、無理だ。
 この目で確かに見てしまった。

 決して騙されてはならない。
 アレはただの偽者で、ただの化物だ。

 主君を守ること。
 それが直属兵である俺の役目だ。

 だというのに、主君を守ることができなかった。
 直属兵の名折れ……ただの出来損ないだ。

 もはや、この命を以って償う他に道はない。

 ……だが、まだ死ねない。
 やり残した仕事が一つだけある。

 その仕事を片付けるまで、絶対に死ねない。
 死ぬことはできない。

 だから殺す。
 この命を懸けて。

 そして奴を殺したそのときにこそ、俺は死ぬことができる。

 主君の許へ。
 レミーゼ様の許へ。

 ようやく、逝くことができるのだ……。