フレアを見送ったあと、あたしはゆっくり骨休めすることが……できなかった。
聖女様のお持て成しは、明日もある。お風呂は一応入ったことだし、屋敷に戻ってふかふかのベッドで寝ようと思っていたら、レバスチャンに首根っこ掴まれてしまったのだ。
アルバータの行方が分からない今、その代役を務めなければならない。
その結果、延々と雑務処理に追われている。
「はぁ、疲れた~」
グッと背伸びをする。
自業自得とはいえ、これ絶対に日を跨いでいるよね。時計見てないけど体感で分かるから。
「レバスチャン? ねえ、居ないの?」
返事がない。
「……よしっ」
レバスチャンの姿も見えなくなったことだし、そろそろ逃げ出してもいい頃合いだろう。
とりあえず、屋敷に戻る前に、やっぱりもう一度お風呂にでも入ろうか。
あの空間は天国だったし、今なら侍女に揉みくちゃにされることなく、こっそりと入浴することができそうだ。
とか考えていると、テイリーを発見。
「テイリー? 今までどこに行っていたの?」
「……すみません」
やっぱりまだ思いつめたような顔をしている。
どこに行っていたのか訊ねても、謝るだけで何も答えようとしない。
あたしが演説をしたりフレアを持て成したりしている間、直属兵のテイリーは何をしていたのか気になるところではあるけど、この調子では答えてくれないだろう。
ふう、とため息を一つ。
お風呂に入るのは、明朝に延期だ。テイリーを待たせるのも気まずいからね。
「屋敷に戻ろうかしら」
「はい……」
残った雑務を放棄して、あたしは部屋を出る。
屋敷までの道のりを、テイリーを引き連れて歩いた。
実のところ、テイリーが話しかけてくるとボロが出そうなので、このまま黙っていてくれた方があたしとしてはありがたい。
だけどやっぱり気になるものは仕方ない。
推しの困ったような表情を見ていると、どうにかして笑顔にしてあげたいと思ってしまう。
そんな風に思考を巡らせながらも、あたしはテイリーと一緒に屋敷へと戻った。
「それじゃあ、護衛は任せたわね」
「……はい」
「おやすみなさい、テイリー」
「……はい」
はいしか言わないテイリーに声をかけ、あたしは屋敷の中に入る。
明日になれば、テイリーの様子も変わっているかもしれない。だからいちいち気にするのは止めておこう。
「さーて、あのベッドでぐっすり寝ようかな~」
明日に備えて、しっかりと眠っておきたいところだ。
屋敷内を歩いて、ベッドの置かれた寝室に向かう。とここで、あたしは地下室の扉が目に入った。
「……開いてる」
地下室の扉が開いている。
あたし、開けてたっけ?
「……?」
多分、閉め忘れたのだろう。
あたしは地下室の扉を閉める。
この屋敷には、死体が二つある。
そんなところで眠ろうだなんて、よくよく考えれば異常極まりないことだ。
でも、あたしが安心できる場所と言ったら、この世界では今のところここしかない。
時が経てば経つほど、色々と厄介なことになりそうだけど、地下室のことは忘れよう。とにかく、フレアの聖地巡礼を無事に乗り切ることだけを考えるんだ。
寝支度を済ませた。あとはベッドに寝転がるだけ。
と、ちょうどそのときだった。
「っ、この音は……」
魔法と魔法がぶつかり合うような音が、屋敷に響く。
レミーゼの屋敷には全体防御魔法がかけられているので、音や衝撃は吸収されるはずだ。それでも響くということは、相当な大きさということになる。
慌てて屋敷の外に出てみると、そこにはテイリーともう一人……。
「サイダール!?」
フレアのお供をしていた元プレイヤーのサイダールの姿があった。
聖女様のお持て成しは、明日もある。お風呂は一応入ったことだし、屋敷に戻ってふかふかのベッドで寝ようと思っていたら、レバスチャンに首根っこ掴まれてしまったのだ。
アルバータの行方が分からない今、その代役を務めなければならない。
その結果、延々と雑務処理に追われている。
「はぁ、疲れた~」
グッと背伸びをする。
自業自得とはいえ、これ絶対に日を跨いでいるよね。時計見てないけど体感で分かるから。
「レバスチャン? ねえ、居ないの?」
返事がない。
「……よしっ」
レバスチャンの姿も見えなくなったことだし、そろそろ逃げ出してもいい頃合いだろう。
とりあえず、屋敷に戻る前に、やっぱりもう一度お風呂にでも入ろうか。
あの空間は天国だったし、今なら侍女に揉みくちゃにされることなく、こっそりと入浴することができそうだ。
とか考えていると、テイリーを発見。
「テイリー? 今までどこに行っていたの?」
「……すみません」
やっぱりまだ思いつめたような顔をしている。
どこに行っていたのか訊ねても、謝るだけで何も答えようとしない。
あたしが演説をしたりフレアを持て成したりしている間、直属兵のテイリーは何をしていたのか気になるところではあるけど、この調子では答えてくれないだろう。
ふう、とため息を一つ。
お風呂に入るのは、明朝に延期だ。テイリーを待たせるのも気まずいからね。
「屋敷に戻ろうかしら」
「はい……」
残った雑務を放棄して、あたしは部屋を出る。
屋敷までの道のりを、テイリーを引き連れて歩いた。
実のところ、テイリーが話しかけてくるとボロが出そうなので、このまま黙っていてくれた方があたしとしてはありがたい。
だけどやっぱり気になるものは仕方ない。
推しの困ったような表情を見ていると、どうにかして笑顔にしてあげたいと思ってしまう。
そんな風に思考を巡らせながらも、あたしはテイリーと一緒に屋敷へと戻った。
「それじゃあ、護衛は任せたわね」
「……はい」
「おやすみなさい、テイリー」
「……はい」
はいしか言わないテイリーに声をかけ、あたしは屋敷の中に入る。
明日になれば、テイリーの様子も変わっているかもしれない。だからいちいち気にするのは止めておこう。
「さーて、あのベッドでぐっすり寝ようかな~」
明日に備えて、しっかりと眠っておきたいところだ。
屋敷内を歩いて、ベッドの置かれた寝室に向かう。とここで、あたしは地下室の扉が目に入った。
「……開いてる」
地下室の扉が開いている。
あたし、開けてたっけ?
「……?」
多分、閉め忘れたのだろう。
あたしは地下室の扉を閉める。
この屋敷には、死体が二つある。
そんなところで眠ろうだなんて、よくよく考えれば異常極まりないことだ。
でも、あたしが安心できる場所と言ったら、この世界では今のところここしかない。
時が経てば経つほど、色々と厄介なことになりそうだけど、地下室のことは忘れよう。とにかく、フレアの聖地巡礼を無事に乗り切ることだけを考えるんだ。
寝支度を済ませた。あとはベッドに寝転がるだけ。
と、ちょうどそのときだった。
「っ、この音は……」
魔法と魔法がぶつかり合うような音が、屋敷に響く。
レミーゼの屋敷には全体防御魔法がかけられているので、音や衝撃は吸収されるはずだ。それでも響くということは、相当な大きさということになる。
慌てて屋敷の外に出てみると、そこにはテイリーともう一人……。
「サイダール!?」
フレアのお供をしていた元プレイヤーのサイダールの姿があった。