あのとき、あたしが発動したのは、対象の魔法一つを術者にお返しする光魔法――【反射】だ。それもただの【反射】ではなくて【反射/永続】を発動した。
【反射】に【永続】を付与することにより、【反射】の効果が一回限りではなくなり、対象を取らずに【反射】することが可能な状態となっていた。
この結果、レミーゼが主で奴隷があたしの構図が一転し、真逆になった。楽しい時間の始まりというわけだ。
まあ、体中が痛すぎて楽しくなんてないんだけどね。
とりあえず、回復魔法を試してみようか……。
「ん? ……ああ、ごめんごめん。苦しそうだからもう口空けていいよ」
「っ、ぷはぁっ、……くっ、いったい何が……? このあたしの身に起きたというの!?」
口を閉じてと言ったら、大人しく従っていたらしい。
興奮しすぎて鼻呼吸が苦しかったのかな。随分と息苦しそうな表情をしていたから、口を開くことを許可してあげた。
「レミーゼ。あんたは今、あたしの奴隷」
「は? ふざけ……」
「あんたが使った【隷属】を【反射】で跳ね返したの。理解できる?」
「【反射】ですって……? あたしの奴隷の分際で、魔法を……? いや、いやいや、そんなことより、このあたしが……奴隷に? ……は? は? はっ? はあっ? ……うそ、嘘よ、嘘だ! そんなの嘘に決まってる!」
信じられないのだろう。
現状を受け入れたくないのは痛いほど分かる。でも、これが現実だ。
「嘘じゃないから。だってあんたさ、あたしが口閉じてって言ったら従ったでしょ」
レミーゼは唖然としている。
この世の終わりを迎えてしまったかのような表情で、その場にへたり込んでしまった。
「こ……公爵令嬢の、このあたしが……奴隷? 罪人の……奴隷ですって? ……は、ははは、それってなんの冗談よ……」
「うーん、冗談じゃないんだけどなぁ……」
事実を言っているだけなのに、全く信用してくれない。
……いや、分かっているけど、現実逃避しているだけかな。現に【隷属】化に抵抗しようとしているし。
「も、もし! あたしに【隷属】がかかってしまったというのなら……! 今すぐ! 今すぐに解除しなさい! これは命令よ!」
「解除しないから。だって自由になったらどうせまた【隷属】であたしを奴隷にするつもりでしょ?」
「はい! っ、違う! その通り! ああもうっ、バカッ! どうして本当のことを口にしてしまうのよ!」
「それが【隷属】だからね……。全く、怖い魔法だよ」
一度でも……たった一度でも闇魔法【隷属】の支配下に置かれてしまえば、己の身を以て、その怖さを体験することができる。
あたしはもちろんのこと、レミーゼにとっても、【隷属】化したのは今回が初めてだったのだろう。
もっとも、【ラビリンス】において公爵令嬢のレミーゼが【隷属】をかけられる場面など存在しないし、レミーゼ自身も想像したことがないはずだから、当然といえば当然か。
「というわけでさ、そろそろあたしの質問にも答えてもらうから。……いいね?」
「はい! もちろんです! っ、じゃない! クソッ! なんであたしがあんたの質問に答えなくちゃいけないのよ……ッ!!」
レミーゼの意志は関係ない。
主従関係にある今、レミーゼは主たるあたしの命令に従ってしまう。
正直言って、この状況はあまり良い気分とは言い難い。
ある程度のところまで聞きたいことを聞いたら、レミーゼにかけられた【隷属】を解こうと思っている。もちろんそのあとは捕まらないように逃げるつもりだけど。
「えーっと、それじゃあまずは……貴女のことを教えて」
あたしが知っている【ラビリンス】のレミーゼと、目の前にいるもう一人のレミーゼ……。
このレミーゼが【ラビリンス】の設定と全く同じか否かを、実際に確かめてみることにした。
【反射】に【永続】を付与することにより、【反射】の効果が一回限りではなくなり、対象を取らずに【反射】することが可能な状態となっていた。
この結果、レミーゼが主で奴隷があたしの構図が一転し、真逆になった。楽しい時間の始まりというわけだ。
まあ、体中が痛すぎて楽しくなんてないんだけどね。
とりあえず、回復魔法を試してみようか……。
「ん? ……ああ、ごめんごめん。苦しそうだからもう口空けていいよ」
「っ、ぷはぁっ、……くっ、いったい何が……? このあたしの身に起きたというの!?」
口を閉じてと言ったら、大人しく従っていたらしい。
興奮しすぎて鼻呼吸が苦しかったのかな。随分と息苦しそうな表情をしていたから、口を開くことを許可してあげた。
「レミーゼ。あんたは今、あたしの奴隷」
「は? ふざけ……」
「あんたが使った【隷属】を【反射】で跳ね返したの。理解できる?」
「【反射】ですって……? あたしの奴隷の分際で、魔法を……? いや、いやいや、そんなことより、このあたしが……奴隷に? ……は? は? はっ? はあっ? ……うそ、嘘よ、嘘だ! そんなの嘘に決まってる!」
信じられないのだろう。
現状を受け入れたくないのは痛いほど分かる。でも、これが現実だ。
「嘘じゃないから。だってあんたさ、あたしが口閉じてって言ったら従ったでしょ」
レミーゼは唖然としている。
この世の終わりを迎えてしまったかのような表情で、その場にへたり込んでしまった。
「こ……公爵令嬢の、このあたしが……奴隷? 罪人の……奴隷ですって? ……は、ははは、それってなんの冗談よ……」
「うーん、冗談じゃないんだけどなぁ……」
事実を言っているだけなのに、全く信用してくれない。
……いや、分かっているけど、現実逃避しているだけかな。現に【隷属】化に抵抗しようとしているし。
「も、もし! あたしに【隷属】がかかってしまったというのなら……! 今すぐ! 今すぐに解除しなさい! これは命令よ!」
「解除しないから。だって自由になったらどうせまた【隷属】であたしを奴隷にするつもりでしょ?」
「はい! っ、違う! その通り! ああもうっ、バカッ! どうして本当のことを口にしてしまうのよ!」
「それが【隷属】だからね……。全く、怖い魔法だよ」
一度でも……たった一度でも闇魔法【隷属】の支配下に置かれてしまえば、己の身を以て、その怖さを体験することができる。
あたしはもちろんのこと、レミーゼにとっても、【隷属】化したのは今回が初めてだったのだろう。
もっとも、【ラビリンス】において公爵令嬢のレミーゼが【隷属】をかけられる場面など存在しないし、レミーゼ自身も想像したことがないはずだから、当然といえば当然か。
「というわけでさ、そろそろあたしの質問にも答えてもらうから。……いいね?」
「はい! もちろんです! っ、じゃない! クソッ! なんであたしがあんたの質問に答えなくちゃいけないのよ……ッ!!」
レミーゼの意志は関係ない。
主従関係にある今、レミーゼは主たるあたしの命令に従ってしまう。
正直言って、この状況はあまり良い気分とは言い難い。
ある程度のところまで聞きたいことを聞いたら、レミーゼにかけられた【隷属】を解こうと思っている。もちろんそのあとは捕まらないように逃げるつもりだけど。
「えーっと、それじゃあまずは……貴女のことを教えて」
あたしが知っている【ラビリンス】のレミーゼと、目の前にいるもう一人のレミーゼ……。
このレミーゼが【ラビリンス】の設定と全く同じか否かを、実際に確かめてみることにした。