「いっその事、一緒に住んじゃう?もう少し広いとこ借りて、ルームシェア」

「すごく楽しそう!……でも、ルームシェアしたら、彼氏できないよ?」

「そんな事ないでしょ。部屋に呼ばなきゃいいんだし」

「私は彼氏ができる心配はないけど、七海は絶対彼氏できるし、きっとずっと一緒にいたくなるよ?」

「うーん。確かに言われてみれば、ずっと一緒にいたくなるかも」


在学中、七海に彼氏がいた事はなかった。

好きな人がいたという話も全くなかったし。

異性の話といえば、大抵ドリプリについてだった。

それと時々、幼馴染の男の子の話が出てきたくらい。

男の子の幼馴染がいるなんて、マンガみたいな展開はなかったのかなってドキドキしたけれど、七海は兄弟としか思えなかったらしい。

どうやら幼馴染の方も七海を妹みたいな感覚としか見てないよっていつも言っていたけれど。

近すぎるとそんな風になっちゃうのかなって、思ってた。



そして、社会人になって三年目。

私は月の光出版社で、七海の所属するスノーライツ出版社とはライバル会社だったけれど、相変わらず仲が良くて。

週末はどちらかの用が入っていない限りは、飲みに行っていた。


「それでね、彼氏がね」

「また彼氏の話~?大好きなんだね」


大学の時と違うのは、話題の中に七海の彼氏が出るようになった事。

大学を卒業してからできたらしく、七海が話すたびに今まで見た事がない、可愛い表情を見せるので、本当にその彼の事が好きなんだなって、聞いている私まで幸せな気持ちになった。