今日も頑張ろう……か。

確かに頑張らないといけないよね。


「お待たせいたしました。ガトーショコラです」


ガトーショコラが運ばれてきて、私の目の前に丁寧に置かれる。


「ごゆっくりどうぞ」


微笑んで会釈をし、トレイを抱えて店員さんは持ち場へ戻っていく。

いつものように食べる前にスマホで写真を撮る。

どこにアップするわけでも誰に見せるわけでもない。

私は撮った事で満足しているけれど、七海は撮った後、ちゃんとしっかり管理してるんだろうなー。

以前、私のスマホが調子悪くなって今までのデータがパアになると焦った時に、七海が笑いながら言ってたっけ。

常にバックアップ取らないとだめだよーって。

幸い、スマホの調子が悪いのも修理で直ったし、データも無事だったから良かった。

それ以来、バックアップを取るようになった。

ガトーショコラをフォークでひと口サイズに切りながら、口へと運ぶ。

このカフェのガトーショコラは甘くない。

ほろ苦く、ビターな味が口の中に広がる。

ビターな恋をまだ知らないのに、一丁前にポエムを提案した。


『ビターな恋。優しく接してくれた彼が、ある日彼女と寄り添うように歩いているのを見てしまった……そんなようなほろ苦い経験をした事はありませんか?』


でも、七海は否定する事無く、笑って受け入れてくれた。

取材用のノートに書かれたポエムを指先でなぞる。

……よし、頑張らないと。

残りのガトーショコラを口に入れ、深呼吸をして立ち上がった。



二軒目はチェリータルトのお店へと向かった。

ビターなスイーツよりも甘酸っぱい物の方が雑誌の効果が出ているようで、店内のお客さんはほとんどがチェリータルトを楽しんでいた。

私もチェリータルトを注文し、バッグから雑誌を取り出してチェリータルトの紹介ページを開く。

『恋するスイーツ』という企画のタイトルが浮かんだきっかけのスイーツ。

取材用のノートにも赤ペンで『恋するスイーツ』と書かれていた。


「お待たせしました。チェリータルトです」


店員さんがトレイにチェリータルトを乗せてきた。

あの日、七海と楽しんだ物と同じチェリータルトが私の前に置かれる。