「……ごめん、話変わるんだけど、瞳の彼は社内の人だっけ?」
「違いますよ。実は、うちの社は社内恋愛禁止なんですよー。中には秘密で付き合ってる人もいるみたいですけど、私には無理ですね。あ、私の彼は大学時代の友だちが合コンを開いてくれて、そこで出会った人なんです」
スノーライツ出版は社内恋愛が禁止されてる……?
さりげなく七海の彼の正体を探ろうとして、思わぬ事が発覚した。
周りに秘密で付き合っている人もいるという事だが、おそらく七海は隠して社内の人と付き合ってはいなかっただろう。
瞳が七海に憧れていたのなら、そういう恋愛に関してだって探っているだろうし。
……じゃあ、一体、どこの誰よ。
浮かれたように自分の彼の話をしているようだけど、瞳の話は全く頭に入ってこなかった。
「社内恋愛禁止って言っても、七海先輩と編集長の仲はちょっと怪しかったんですよねー。よく二人でコソコソと話しているのを見た事がありますし、二人で出かけてるって話も聞いた事があります。編集長、既婚者なのにってみんなで言ってたんですけどね」
七海の葬儀の時に、田辺さんが奥さんへのプレゼントの相談によく乗ってくれていたと話していたので、おそらくその事だろう。
噂というのは本当に無責任なもので、当人たちにとっては迷惑な事である。
「マリエ先輩も編集長とよく二人で話してますし、編集長ってモテるんだなーって思ってました」
「……もうそれ、やましい事じゃないんじゃないの?」
呆れたように言うと、瞳はフフッと笑う。
「マリエ先輩は大学の時の先輩と付き合ってるみたいですから、編集長と何かあるとは思ってないですけどね。……でも、言われてみれば、私、七海先輩の彼を見た事ありました」
「えっ?」
「顔は見なかったんですけどー。会社を出たら、七海先輩と男の人が腕を組んで歩いているのを見たんで、多分、七海先輩の彼氏だと思うんですけど」
会社を出たところで見たという事は、七海の会社に迎えに来たという事。
きっと、それは初めての事ではなく、何度もあった事だと思う。
他の誰かも見ているかもしれない。
「七海先輩だけじゃなくて、結構迎えに来てる彼氏さんって多いみたいですよ。私も迎えに来てもらった事もあるし。んー、そういえば田辺編集長も奥さんが迎えに来てたっけ」
「スノーライツ出版の近辺はおしゃれなご飯屋さん多いしね……」
「確かに、それはあるかもです。仕事終わりに社員同士で行く人もいますし」
瞳は顔までは見ていないという事だけど、どんな人だったかまではさすがに突っ込んで聞く事ができなかった。
だけど、七海の彼氏を目撃した事があるというだけでも、大きな収穫だと思う。
「……瞳、ありがとう。急用を思い出したから、先に帰るね」
「えっ?先輩、まだ7時半ですよ?早くないですか?」
急に帰り支度を始めた私に、キョトンとした顔で聞く瞳。
「うん、急用思い出したから、ごめん。じゃあ、またね」
そう言って私はバッグと伝票を持ち、瞳に手を振ってその場を後にする。
「違いますよ。実は、うちの社は社内恋愛禁止なんですよー。中には秘密で付き合ってる人もいるみたいですけど、私には無理ですね。あ、私の彼は大学時代の友だちが合コンを開いてくれて、そこで出会った人なんです」
スノーライツ出版は社内恋愛が禁止されてる……?
さりげなく七海の彼の正体を探ろうとして、思わぬ事が発覚した。
周りに秘密で付き合っている人もいるという事だが、おそらく七海は隠して社内の人と付き合ってはいなかっただろう。
瞳が七海に憧れていたのなら、そういう恋愛に関してだって探っているだろうし。
……じゃあ、一体、どこの誰よ。
浮かれたように自分の彼の話をしているようだけど、瞳の話は全く頭に入ってこなかった。
「社内恋愛禁止って言っても、七海先輩と編集長の仲はちょっと怪しかったんですよねー。よく二人でコソコソと話しているのを見た事がありますし、二人で出かけてるって話も聞いた事があります。編集長、既婚者なのにってみんなで言ってたんですけどね」
七海の葬儀の時に、田辺さんが奥さんへのプレゼントの相談によく乗ってくれていたと話していたので、おそらくその事だろう。
噂というのは本当に無責任なもので、当人たちにとっては迷惑な事である。
「マリエ先輩も編集長とよく二人で話してますし、編集長ってモテるんだなーって思ってました」
「……もうそれ、やましい事じゃないんじゃないの?」
呆れたように言うと、瞳はフフッと笑う。
「マリエ先輩は大学の時の先輩と付き合ってるみたいですから、編集長と何かあるとは思ってないですけどね。……でも、言われてみれば、私、七海先輩の彼を見た事ありました」
「えっ?」
「顔は見なかったんですけどー。会社を出たら、七海先輩と男の人が腕を組んで歩いているのを見たんで、多分、七海先輩の彼氏だと思うんですけど」
会社を出たところで見たという事は、七海の会社に迎えに来たという事。
きっと、それは初めての事ではなく、何度もあった事だと思う。
他の誰かも見ているかもしれない。
「七海先輩だけじゃなくて、結構迎えに来てる彼氏さんって多いみたいですよ。私も迎えに来てもらった事もあるし。んー、そういえば田辺編集長も奥さんが迎えに来てたっけ」
「スノーライツ出版の近辺はおしゃれなご飯屋さん多いしね……」
「確かに、それはあるかもです。仕事終わりに社員同士で行く人もいますし」
瞳は顔までは見ていないという事だけど、どんな人だったかまではさすがに突っ込んで聞く事ができなかった。
だけど、七海の彼氏を目撃した事があるというだけでも、大きな収穫だと思う。
「……瞳、ありがとう。急用を思い出したから、先に帰るね」
「えっ?先輩、まだ7時半ですよ?早くないですか?」
急に帰り支度を始めた私に、キョトンとした顔で聞く瞳。
「うん、急用思い出したから、ごめん。じゃあ、またね」
そう言って私はバッグと伝票を持ち、瞳に手を振ってその場を後にする。