瞳は運ばれてきたアイスカフェオレをストローでかき混ぜながらそう言った。

高校の時、付き合っている彼の事が好きで好きで、部活の休憩中にも惚気話をたくさん聞かされたくらい。

部活が終わって、帰り道の電車の中でも、携帯片手に熱く語られたのを覚えてるんだけどな。

人の気持ちに永遠なんて物はないのだろうけれど、あの時感じた情熱は一体どういうタイミングで冷めていったのだろうか。


「今の彼に出会って分かったんですけど、学生の時は毎日が楽しくて先の事なんかなーんも考えてなかったんですよね。今が良ければいい!みたいな感じで。でも社会人になってからは、自分の行動に責任が付きまとうようになるじゃないですか。そんな中で、楽しいだけじゃダメなんだな、お互い高め合っていける仲でいたいなって」

「……人って変わるものなんだね」

「どういう意味ですか」


高校の時、何も考えてなさそうな子だったのに、気付く事ができたって、すごい成長だと思う。

なんか後輩の成長を見ていたら、私もいつまでもずっと七海の姿を追い求めて生きてたらダメだなって思った。

注文したビーフシチューとフランスパンが二切れのセットが二人分運ばれてきた。

自分の前に置かれたそれらを綺麗に置きなおして、瞳はスマホで写真を撮っている。


「あ、ごめんなさい。職業柄、何でも写真を撮っちゃうんですよね」

「職業病あるあるだね」


職業柄、何でも写真を撮るという事は、瞳はカメラマンか何かなのかな?

熱々のビーフシチューで舌を火傷しないよう、フーッと息を吹きかけながら冷まして食べる。


「先輩、バッグに入ってる雑誌、今日発売のですよね?」

「えっ?……ああ、これ?」


瞳が向かいの席から私の隣に置いてあるバッグを指さして言った。

バッグを見ると、雑誌が顔を出している。


「うん、そう」

「発売日に買って下さったんですね。弊社の雑誌、お買い上げありがとうございます!」

「ん、弊社?」


ペコッと頭を下げながら、可愛く言う瞳に私が聞き返す。


「はい。……あ、言ってなかったですね。私、スノーライツ出版に勤めてるんですよ。……これ、名刺です」


瞳が名刺ケースを取り出し、私に差し出した。