相談に乗ってもらってからあれから進展を話せてはいない。

話せるような進展は何もないんだけど。

二人で並んでラウンジへ行き、窓側の席に座る。

雨はまだ降り続いていて、窓からの景色は霞んでいてあまりよく見えない。

座るなり雑誌を広げて二人して覗き込む。


「恋するスイーツ特集かー。この記事のカフェ、柚乃は全部一緒に回ったんでしょ?」

「回ってます」

「じゃあ、柚乃のイチオシ当ててあげようか?」

「えー?綾音先輩、当てる事できますー?」

「柚乃の事、わかってるから当てられるって。……これじゃない?」


何度かペラペラとめくって、いくつもあるスイーツの中から綾音先輩が指をさした。

それは、『甘酸っぱい恋』と書かれているチェリータルトだった。


「えっ?!綾音先輩、天才すぎます!大正解です」


いくつもあるスイーツの中からドンピシャで当てられるとは思いもしなかった。

大げさに拍手をしながら言うと、綾音先輩がフフッと得意げに笑う。


「ほーらね?柚乃を見ていれば、楽勝」

「私、そんなに単純ですか?」

「そういう事じゃないって」


私の問いかけに綾音先輩は笑いながら手を振る。

なんか色々な人から心を読み取られているように思うんだけど。


「柚乃ってスイーツ好きだけど、甘すぎる物よりかは、少しアクセントのある物が好きじゃない?でも、ビターな物は好まないし、割と酸っぱい系は好きだから、甘酸っぱいスイーツが一番しっくりくるのかなって思ったの」

「綾音先輩、名探偵すぎるんですけど」

「だてに教育係担当してないわよ。柚乃も新人ちゃんの教育係になったら、ちゃんとそういうところまでしっかり見なきゃダメよ?」

「はーい」


返事はしたものの、こんな私に教育係が務まるものだろうか。

でも、もし教育係に任命されたら、綾音先輩に教わった事をしっかり伝えていこうと思う。


「……ん?」


サンドウィッチを食べながら企画の記事を読んでいた綾音先輩は、不思議そうに首を傾げている。


「どうかしました?」

「この企画の記事って未完成だったの?」

「えっ?」

「ほら、ここ。インタビューのところの名前が七海ちゃんじゃないから、記事が未完成だったのかなって」


記事の文章の最後にインタビューした人と撮影者の名前が表記されているが、綾音先輩が指さしたところをよく見ると、確かにインタビューのところの名前は桐山七海ではなかった。