「撮影で会って、結婚したっていう話もあるけど、柚乃はそういうのないの?」

「ないよ。だって、仕事だもん。確かに、他誌の編集さんとかでそういうの目的だっていう人もいるみたいだけど、私はやっぱり言い方悪いけど、『商品』としか見えないかな」

「イケメンばかり見てるからリアルに恋ができないってさっき言ったばかりなのに?」

「え、矛盾してる?」


慌てたように聞くと、七海はクスッと笑った。


「恋愛しようと思っても、無意識にリアルの男性を雑誌のイケメンと比べちゃってるみたい」

「あああ……そんなつもりないんだけどな」


指摘されて私は頭を抱えてしまった。

周りにいる人と比べる……というより、仕事で疑似恋愛みたいなのをしている感覚だからか、今はあまり恋愛しようと考えられないというのが正解かもしれない。

起用した芸能人の好きな女性のタイプとか、趣味とかハマっているものとか、お決まりのインタビューをするせいでもある。

これって、人のせいにしてるように聞こえちゃうかな。

そんな事を思いながらも、七海に本音を話したら、ケラケラと笑われた。


「柚乃らしいね!仕事が楽しいって事でしょ?カッコいいよ」

「そう……かな」


褒められたと思って、素直に受け取っておこう。

七海はクスッと笑いながら頬杖をついた。


「うん。カッコいいよ。……私も頑張らないとなー」

「七海だって頑張ってるじゃん。休みの日も仕事のネタ探してるし」


七海は女性誌でもグルメ雑誌を扱う編集部にいる。

この前の休みの日に七海と一緒に色々なお店を巡った。


『柚乃が付き合ってくれたんだもん。絶対に取り上げてもらうんだ』


そう言って意気込んで、企画会議で出す企画書を作成するために休みの日も仕事の話ばかりだった。

私だけじゃなくて、七海だって仕事が楽しくて仕方がないんだと思う。


「七海だってカッコいいよ!」

「えー?なんか、面と向かって言われると照れちゃうね。……でも、ありがと」

「あ、そういえば、この前の企画書どうだった?」

「えっ?……ああ、うん、まあ……ね」


私の声に一瞬、反応が遅れた。

急にトーンダウンした七海。

体調が悪くなったのかと思って、心配になる。


「七海、どうかした?酔いが回った?」

「あー……何か、お互いに褒め合って高めてる私たちって笑えるねなって思ってて」

「確かに、そうだよね」


アルコールが入っているせいでもあると思う。