おばさんにお礼を言って、桐山家をあとにする。

当然のごとく、前回同様に私は燈真君の車の後部座席に素早く乗り込み、毛布をかぶりながら横になる。


「もっと毛布いる?」

「もっとかぶった方がいい?足りない?見えてる?」


一枚じゃ隠れられてない?

そう思いながら聞き返すと、運転席に座った燈真君が笑い出す。


「ごめんごめん。毛布一枚で寒くないかっていう意味だったんだけど」

「あー……。全然、大丈夫。一枚で隠れられてないから言われたのかと」

「いや、違うから。……前回もだけど、こんな形で本当にごめん。本音はちゃんと、助手席に乗せてあげたいんだけど」

「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。そもそも推しの車に乗れるだけで、ありがたいと思わなきゃ」

「……俺は青柳さんで推しの青柳燈真君とは違うんじゃなかったの?」


燈真君が可笑しそうに笑った。

……確かに、ちゃんと線引きしていたはずなのに、同じ人物として扱ってしまっている。


「……忘れてよ」

「もう聞いちゃったから、取り消しは不可能。んじゃ、行くよ」


そう言って、燈真君は車を出発させた。


「七海のお墓の場所、おじさんから聞いたの?」

「いや、納骨する時に俺も来たんだ。その日は夕方から仕事だったんだけど、時間的に余裕ができたから」

「そっか」


おじさんおばさんだけでなく、他にも七海を見届けてくれる人がいて良かった。

七海の過去を知ってしまったから、余計にそんな風に思ってしまう。

こんなの、憐れんでるみたいで七海にとって失礼な事だろうか。



「着いたよ」


七海の家を出発してから15分ほどで目的地に到着した。

私は素早く車から降りて、目立たないように素早く車から離れる。

今月の月命日ははお彼岸とかぶっているので、平日でも人がいるのではないかと警戒していたが、思っていたよりは駐車場に車はなかった。

周囲を見渡しても特に怪しい車や人影はなかったが、燈真君が歩き出したのを見て、念のため、かなり距離をとって彼の後をついていく。

墓地の中を少し歩いた後、燈真君が足を止めた。

真新しいお墓に供えられた綺麗な花。

燈真君はサングラスを外し、墓前で頭を下げる。

私も持ってきた花を供え、線香に火をつけた。