七海を助けられたかもしれないのにって、未だに思う。

だからせめて打ち明けるのは、七海が自分の命を絶った理由がわかった後にして欲しい……。

自分勝手な願いだってわかってる。


「ああ、高校は女子高だから、付き合ってた男は載ってないよ」


彼が小学校の卒業アルバムを戻したのを見届けてから、高校のアルバムを取り出そうとしたらそう言われた。

地元に嫌悪感があるのなら、小学校に引き続き中学校では特に情報が得られないと思って、高校の卒業アルバムを見てみようと思った。


「そっか、女子高だったんだ」

「そう。まあ、男に好かれて変な妬みで嫌がらせされるのが嫌だったんだろうな。その点、女子高ならそんないざこざ避けられるし」

「……そっか、そうだよね……ってか、わかったのは燈真君が芸名で、今とは違う過去だったっていう事だけじゃん。電話で言ってくれれば良かったのに」

「いや、それ言われると確かにそうなんだけど、なんか言いづらかったっていうか、人から話を聞くより自分の目でしっかり見た方がいいんじゃないかって思ったんだ。ほら、百聞は一見に如かずって言うし?出版社勤めなら、余計にそう思うだろ?」

「……確かに」


燈真君の言葉に納得してしまった。

納得している場合じゃないんだけど。

七海の高校の卒業アルバムを本棚から取り出し、ケースから出した瞬間、写真が何枚か落ちた。


「わ、七海、めちゃめちゃ可愛い!」

「高校の写真?」


落ちた写真を拾い上げると、制服を着てカメラに向かって笑顔でポーズを取っている七海がそこにいた。

隣にいるのは七海と同じように可愛い子……っていうより、綺麗な子だ。

アルバムに収納しきれなかったのか、卒業アルバムに何枚も挟んであるようだった。

小学校の卒業アルバムとは違って、どの写真も心から笑っているようで、楽しそうだった。

……良かった。高校では本当の友だちを見つける事ができてたんだね。


「何で中途半端にこの写真だけしまわれてないんだ?」

「高校の時ってやたら写真撮らなかった?」

「まあ、職業柄撮られる事が多かったけど」

「……ごめん、聞く相手を間違えた」


高校生になってから何かとスマホで写真を撮る事が多くて、私も友だちとたくさん写真を撮った。

お気に入りの写真は写真たてに入れて飾ったり、コルクボードに貼っていた。

七海の部屋にもコルクボードがあるのにそこには写真が一枚もない。

でも、高校の卒業アルバムに挟んであった写真にはピンでとめたような小さな穴が開いている。