うちの社のラウンジは各階にあるが、窓から見える景色がすごくいい。

天気のいい日は富士山が見えるって、入社説明会の際、案内してくれた人が言っていた。

そのせいか、タブレットを持ち込んでここで作業している人の姿もある。

書籍コンテンツ編集部の人はよくここで原稿を読んでいるという話も聞いた事がある。

私もラウンジで仕事ができるほど余裕を持てるようになれたらいいのにな……。


「柚乃、お待たせ」


窓から見えるビルを眺めながらそんな事を思っていたら、綾音先輩が来た。


「あ、はい……」

「仕事のスケジュールも余裕を持ってこなしてると思うんだけど、ずっと疲れた顔してる。……これ、カフェオレ」

「すみません……ありがとうございます」


綾音先輩が、持っていたカップを私に差し出してきた。

お礼を言いながら受け取ると、先輩は私の向かいに座る。


「話してくれるまで待とうって思ったけど、さすがに限界。……何かあった?」


先輩がホットコーヒーの入ったカップに口をつけながら私に問いかける。