自分で自分の変化に気が付かないほど、七海の死はショックだったという事だろう。


「もしかして、編集部で嫌がらせされてるとか?」

「いえっ!そんな事は絶対にないです。皆さん、ミスばかりの私に本当に親切で、私はもっともっと頑張らなきゃって思ってます」

「そっか。そう言ってくれると同じ編集部にいる俺も嬉しいよ。……あんまり自分を追い込んで無理するなよ?何かあればいつでも声かけて」

「ありがとうございます」


それじゃ、と言って辰巳さんは手を挙げてエレベーターホールの方へ歩いていく。

私は頭を下げて、その姿を見送った。

ミスが多い困った部下にもこんな風に優しく声をかけてくれるところが、女子社員からの人気の理由なんだろうな。

イケメンだけじゃなくて、誰のフォローにも回ってくれる気遣いができる人って、なかなかいないよね。


「……私もしっかり頑張らなくちゃな」


教育係が外れてひとり立ちしたというのに、こんな風に心配されていたら駄目だ。

私は自分自身に言い聞かせて、ラウンジへと向かった。